自己紹介の準備は、できていますか
銀行で「何をやっている商売か」を伝えるとき、いちばん大切なのは、一言でわかりやすく言えること。相手の知っている言葉に翻訳し、できれば稟議でそのまま使える形にして渡す。一言で言えることが、なぜ信用の入口になるのかを掘り下げます。
はじめに——これは「地方の金融機関」共通の話
ここで述べる手続き・心得は、地方金融機関のいずれでも共通するフローだと思ってください。都市銀行(メガバンク)を別にすれば、地域の金融機関との付き合い方は、おおむね同じ作法で通ります。
「私の仕事は〇〇です」を、一言で
言葉でも資料でも、「私の仕事は〇〇です」を一言で表せること。自己紹介では、これがいちばん大切です。
どんなにたくさんの客を相手にしている金融機関の職員も、何にでも詳しいわけではありません。たとえば「ビリヤニ専門店を経営しています」と言っても、ビリヤニが何料理か知らない人には、ピンときません。けれど「インド料理で、ちょっと変わった料理を出すインド料理屋です」と言えば、相手は「インド料理屋の社長さん」として、すっと覚えてくれます。ビリヤニと言われてわからなかった相手には、「なんだったか、何か変わった料理を出している、あのあたりに店がある社長さん」という、あいまいな像しか残りません。
「Eラーニングとオンラインで英語のレッスンを提供しています」より、「英会話教室を、インターネットを使ってやっています」のほうが、像がはっきり結ばれます。
一言で、わかりやすく説明する。中身を説明する資料は、その後ろに回す。これが基本です。
なぜ、一言が効くのか——曖昧さは「疑う余地」を残す
わかりにくい横文字で長々と説明すると、相手にはもやもやした感触が残ります。そのもやもやは、ときに猜疑心につながります。
逆に、自分や自分の事業を一言で紹介できる人は、一般に疑われにくいものです。「私は警察官です」「私は銀行員です」「私は大工です」「私は溶接職人です」——これらの言葉に、疑う余地は宿りません。では、「何をやっているかうまく説明できないけれど、あの人はお金を持っている」という言葉は、どんな感触を残すでしょうか。
半手先回りして、相手が使える形で渡す
もう一段、踏み込みます。
あなたの融資の申し込みは、遅かれ早かれ、担当者の手で稟議に上げられます。稟議書を書くのは、あなたではなく、銀行員です。そこで効くのが、「相手はたぶんこれを知らないだろう」と半手先回りして、説明を用意しておくことです。
専門的に正解と言い切れる作法ではありませんが——あなたの事業の紹介、製品の説明、店舗の立地の意味。門外漢にはわかりにくいけれど大切なエッセンスを、誰が見てもわかる表現に翻訳しておく。できれば、銀行員が稟議を書くときにそのままコピーできる、あるいは書き写せる形にしておく。そこまでして渡すのです。
この「半手先回りして相手の立場で考え、使いやすくして渡す」という姿勢こそ、同業他社より一歩前に出る、基本の構えではないでしょうか。
つまずきやすいところ
一言で言おうとするあまり、謙遜しすぎて何屋かわからなくなるのは逆効果です。かといって、思いや夢ばかりを語っても、相手の像は結ばれません。大切なのは、相手の知っている言葉に翻訳して、輪郭をはっきり渡すこと。立派に見せることではありません。