東日本銀行——横浜銀行と組んだ東京の第二地銀は、なぜ預金を超えて貸すのか
預貸率108.0%、預金1.5兆円。中央区に本店を置く東日本銀行。横浜銀行とともにコンコルディア・フィナンシャルグループを構成する第二地銀が、預金を超えて貸し出す数字を、グループの立場と東京という市場から読みます。
東京都中央区に本店を置く東日本銀行は、東京を主たる地盤とする第二地方銀行です。預金1兆5,078億円、貸出金1兆6,287億円、店舗87。日本最大の地方銀行・横浜銀行とともに、コンコルディア・フィナンシャルグループを構成する銀行です。
本拠地の東京都は、日本最大の経済圏であり、中小企業の数も全国で最も多い土地です。東日本銀行は、その東京を中心に、中小企業への融資に強みを持つ銀行として歩んできました。メガバンクが大企業を、信金・信組がより小さな事業者を相手にするなかで、その中間にある中小企業に向き合ってきた第二地銀です。この巨大な中小市場という地盤と、横浜銀行と組んだグループの立場が、東日本銀行の数字を読む鍵になります。
東日本銀行は、2016年、横浜銀行とともに持株会社コンコルディア・フィナンシャルグループを設立し、その傘下に入りました。神奈川を地盤とする日本最大の地銀・横浜銀行と、東京を地盤とする第二地銀・東日本銀行が組むことで、首都圏を広くカバーする金融グループが生まれたのです。数字の面で目を引くのは、預貸率108.0%——集めた預金よりも、貸し出している額のほうが多いという数字です。
まず、数字を並べる
東日本銀行の預金は1兆5,078億円、貸出金は1兆6,287億円、預貸率108.0%。自己資本比率は8.77%、不良債権比率は2.7%。中小企業等向けの貸出残高は1兆4,776億円にのぼります。
| 預金 | 1兆5,078億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 1兆6,287億円 |
| 預貸率 | 108.0% |
| 自己資本比率 | 8.77% |
| 不良債権比率 | 2.7% |
| 中小企業等向け貸出残高 | 14,776億円 |
| 店舗 | 87店 |
貸出金が預金を1,200億円あまり上回る。その原資はどこから来るのか。
なぜ、預金を超えて貸せるのか
預貸率108.0%。集めた預金より多く貸し出している。預貸率はふつう100%を超えない——預金が貸出の原資だからです。それが108.0%。この一見ありえない数字の裏側に、東日本銀行の立場があります。
預金を超えて貸し出すには、預金以外の原資が要ります。東日本銀行がそれを持てるのは、コンコルディア・フィナンシャルグループの一員だからです。グループのなかでは、資金はグループ全体で融通されます。グループ内の調達や市場からの資金を通じて、一行単体の預金量を超える貸出を支えることができる。東日本銀行の108.0%という預貸率は、「単独で無理に貸しすぎている」のではなく、グループの資金力を背景に、東京の中小企業市場へ積極的に貸し出している姿の表れと読めます。中小企業等向けの貸出残高1兆4,776億円が貸出金のほとんどを占めることが、その性格をよく表しています。
不良債権比率2.7%は、第二地銀としてやや高めの水準です。体力で大手に劣る第二地銀が、中小企業に積極的に貸せば、相対的にリスクの高い先も引き受けることになり、焦げ付きは高まりやすい。預貸率108.0%という攻めの数字と、やや高めの不良債権比率は、ともに「東京の中小に深く貸す」第二地銀の姿の両面と読めます。もちろん、これらの比率にはグループ内の資金配分の方針なども絡むため断定はできませんが、横浜銀行と組んだグループの立場と、東京の巨大な中小市場を抜きに、この数字は読めません。
同じ東京で、貸さない巨大信金と並べてみる
本紀行には、同じ東京都の多摩信用金庫も登場しています。多摩信金は、預金3兆円超という巨大な規模を持ちながら、預貸率は36.6%と、集めた預金の3分の1ほどしか貸さない信金でした。預金を超えて貸す東日本銀行(預貸率108.0%)と、巨大な預金を抱えながら貸出を絞る多摩信金(預貸率36.6%)とを並べると、同じ東京を地盤としながら、グループの力で攻める第二地銀と、地域に蓄える巨大信金とで、預貸率がこれほど分かれることが見えてきます。貸さずに構える巨大信金の姿は、多摩信用金庫の記事もあわせてどうぞ。
借り手にとっての意味
グループの資金力を背景に積極的に貸す第二地銀は、東京の中小事業者にとって有力な選択肢です。とりわけ中小企業への融資に強みを持つ東日本銀行は、成長や運転資金を求める事業者に向き合うことがあります。高い預貸率は積極的に貸す姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、立場と市場を映す
預貸率108.0%という数字は、横浜銀行と組んだグループの資金力という立場と、日本最大の中小市場・東京という土地が重なった、固有のものです。預金の範囲で地元に貸す地銀もあれば、東日本銀行のようにグループの力で預金を超えて貸す第二地銀もある。数字は、その金融機関が置かれた立場と、貸す相手のいる市場の性格を、同時に映します。東日本銀行の数字は、首都圏グループの一翼として東京の中小に貸す第二地銀の、いまの記録です。
各地の金融機関には、それぞれの立場と市場の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。東京都の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、東京都の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
東日本銀行の沿革(東京を主たる地盤とする第二地方銀行、中小企業融資に強みを持つこと、2016年に横浜銀行とともにコンコルディア・フィナンシャルグループを設立しその傘下に入ったこと)に関する記述=東日本銀行・コンコルディア・フィナンシャルグループおよび各種公開情報にもとづく。
東京都の経済(日本最大の経済圏、中小企業数が全国最多であること)に関する記述=各種公開情報。
横浜銀行・多摩信用金庫の位置づけ=各種公開情報および本紀行既出記事。
第二地方銀行の一般的な性格に関する記述=一般的な金融制度の説明にもとづく。