阿波銀行——藍商の地に生まれた徳島の地銀は、何に貸すか
預貸率75.1%、預金3.3兆円。徳島市に本店を置く阿波銀行。藍商で栄えた徳島に生まれた県内トップの地銀が、預金の7割超を貸す姿を、阿波という土地から読みます。
徳島県徳島市に本店を置く阿波銀行は、地元で「あわぎん」と呼ばれる、徳島県を代表する地方銀行です。預金3兆2,722億円、貸出金2兆4,568億円、店舗105。徳島県の県内トップバンクであり、県の指定金融機関——公金を扱う銀行——でもあります。
本拠地の徳島は、四国の東部、吉野川がもたらす肥沃な平野を抱える土地です。江戸期には、吉野川流域で育つ藍(あい)を原料とする染料「阿波藍」の生産・取引で栄え、その富が「阿波の藍商」と呼ばれる豪商を生みました。いまも農業(すだち・れんこん・なると金時など)や食品、製薬・化学、そして渦潮や阿波おどりに代表される観光が、県の経済を支えています。この、藍商の富を礎とする商いの伝統が、阿波銀行の数字を読む鍵になります。
阿波銀行は、1896年に「阿波商業銀行」として創業し、1964年に阿波銀行へ行名を変更しました。大きな合併・買収を経ずに歩んできた銀行で、その源流をたどると、藍で富を築いた徳島の豪商の力に行き着きます。数字の面で見ておきたいのは、預貸率75.1%という、地方銀行として高めの水準です。
まず、数字を並べる
阿波銀行の預金は3兆2,722億円、貸出金は2兆4,568億円、預貸率75.1%。自己資本比率は10.43%、不良債権比率は1.97%。中小企業等向けの貸出残高は1兆8,396億円にのぼります。
| 預金 | 3兆2,722億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 2兆4,568億円 |
| 預貸率 | 75.1% |
| 自己資本比率 | 10.43% |
| 不良債権比率 | 1.97% |
| 中小企業等向け貸出残高 | 18,396億円 |
| 店舗 | 105店 |
預貸75.1%・不良債権1.97%。県内トップ地銀が、阿波で貸す数字。
75.1%を、阿波の土地から読む
預貸率75.1%は、地方銀行として高めの水準です。集めた預金の7割超を貸出に回している。不良債権比率1.97%という相応に低い水準とあわせて読むと、地域に積極的に貸しながら、堅実さも保ってきた県内トップ地銀の姿が見えてきます。
阿波銀行が貸す相手は、徳島県内の幅広い事業者と個人です。農業・食品、製薬・化学などの製造業、地域の商業・建設・サービス業、そして県内の住宅需要が、その融資先に含まれます。徳島は、人口規模こそ大きくありませんが、藍商以来の商いの伝統と、吉野川流域の農業・食品、瀬戸内・紀伊水道に面した産業が、地域経済を支えてきました。県内トップの基盤を持つ阿波銀行は、その資金需要を取り込み、地方銀行のなかでも高めの預貸率を保っていると読めます。隣接する香川・愛媛、そして関西方面にも目を向け、県外取引も取り込んでいます。
不良債権比率1.97%という水準は、特定の産業に偏らず、農業・製造・商業・サービスに貸し先が分散していることと、堅実な与信の積み重ねの表れと読めます。自己資本比率10.43%という相応の厚みとあわせて、攻めと守りを両立した県内トップ地銀の安定がうかがえます。もちろん、これらの比率には経営方針や景気も絡むため断定はできませんが、藍商の富を礎に商いを重ねてきた徳島という土地を抜きに、この数字は読めません。
同じ徳島で、地区の信金と並べてみる
本紀行には、同じ徳島県の阿南信用金庫も登場しています。阿南信金は、県南部・阿南を中心とする地区に根ざす信金でした。県全域を相手にする県内トップ地銀・阿波銀行(預貸率75.1%・預金3.3兆円)と、阿南の限られた地区に密着する阿南信用金庫とを並べると、同じ徳島県でも、県全体に展開する大きな地銀と、特定の地区を支える信金とで、規模も役割も大きく異なることが見えてきます。地区の信金の姿は、阿南信用金庫の記事もあわせてどうぞ。
借り手にとっての意味
県を代表する大手地銀は、徳島県の事業者にとって、もっとも身近な選択肢のひとつです。県内トップの基盤と、県外にも広がるネットワークは、成長や広域取引を目指す企業にとって心強いものです。高めの預貸率は積極的に貸す姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、阿波の商いを映す
預貸率75.1%という高さと、不良債権比率1.97%という相応の低さは、藍商の富を礎に商いを重ねてきた徳島に根ざし、県内トップの基盤を持って攻めと守りを両立してきた地銀の姿を映しています。規模を合併で拡げてきた地銀もあれば、阿波銀行のように地元の商いの力を礎に単独で歩んできた地銀もある。数字は、その金融機関がどんな土地に立ってきたかを語ります。阿波銀行の数字は、藍商の地に生まれた徳島のトップ地銀「あわぎん」の、いまの記録です。
各地の金融機関には、それぞれの土地と来歴の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。徳島県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、徳島県の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
阿波銀行の沿革(1896年に阿波商業銀行として創業、1964年に阿波銀行へ行名変更、大きな合併・買収を経ていないこと、徳島市本店、徳島県の指定金融機関、県内トップバンク、藍商の系譜)に関する記述=阿波銀行および各種公開情報にもとづく。
徳島県の歴史と産業(吉野川流域の阿波藍と藍商、農業・食品、製薬・化学、観光)に関する記述=各種公開情報。
阿南信用金庫の位置づけ=各種公開情報および本紀行既出記事。