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西海みずき信用組合——造船と基地の町で、信組は誰に貸しているのか

預貸率89.6%、不良債権比率7.11%。造船の城下町・長崎県佐世保に根ざす西海みずき信用組合。高い預貸率と高い不良債権という珍しい組み合わせを、造船業の構造変化と基地・観光の街から読む。

ニホン銀行紀行 ・ 長崎県

長崎県佐世保市に本店を置く西海みずき信用組合は、長崎県北部に根ざす信用組合だ。預金404億円、店舗6。造船とともに歩んできた港町に立っている。

佐世保は、造船の城下町である。旧海軍工廠を引き継いだ佐世保重工業(通称SSK)が町の象徴で、かつては世界最大級のタンカーをここで建造した。あわせて、海上自衛隊とアメリカ海軍の基地が置かれ、近隣にはハウステンボスもある、基地と観光の街でもある。ただし、その造船業はいま大きな転換期にある。この土地の産業構造が、西海みずき信用組合の数字を読む鍵になる。

この信用組合の数字で目を引くのは、預貸率89.6%という高さと、不良債権比率7.11%という、これも高めの水準だ。たくさん貸しつつ、不良債権も高い——本紀行でこれまで見てきた信組とは、やや異なる組み合わせだ。なぜこうなるのか。その答えは、造船の町という土地にある。

まず、数字を並べる

西海みずき信用組合の預金は404億円、貸出金は362億円、預貸率89.6%。自己資本比率は8.61%、不良債権比率は7.11%。中小企業等向けの貸出先は3,562件。

西海みずき信用組合(2025年3月期)
預金404億円
貸出金362億円
預貸率89.6%
自己資本比率8.61%
不良債権比率7.11%
中小企業等向け貸出先3,562件
店舗6店

よく貸し、不良債権も高い。珍しい組み合わせを、造船の町から読む。

89.6%と7.11%を、造船の町から読む

たくさん貸せば、ふつうは焦げ付きのリスクも上がる。預貸率89.6%という高さと、不良債権比率7.11%という高さが同居しているのは、この信組が「リスクを取って地元に深く貸してきた」ことの表れと読める。そして、その地元とは、構造変化のただ中にある造船の町だ。

佐世保の象徴である佐世保重工業は、新造船の事業を近年に休止し、修繕・改修に特化した。かつて町を支えた造船業が、その姿を大きく変えつつあるということだ。造船には、数多くの下請けや関連の中小事業者がぶら下がっている。本体の事業が縮めば、その影響は地元の小さな事業者に及ぶ。西海みずき信用組合が貸す相手の多くは、まさにそうした造船関連の中小事業者や、基地・観光に関わる地元の事業者だと考えられる。構造変化のただ中にある産業に深く貸せば、不良債権比率が高めに出やすいと考えられる。自己資本比率が8.61%と高くないことも、楽な環境ではないことをうかがわせる。もちろん、不良債権比率には個別の事情も絡むため断定はできないが、造船の町の構造変化を抜きに、この数字は読めない。

それでも貸すという、信組の役割

注目すべきは、それでも預貸率89.6%という高さで、地元に貸し続けている点だ。町の産業が転換期にあるからこそ、地元の中小事業者には資金が要る。運用に逃げて貸出を絞るのではなく、リスクを取って深く貸す——そこに、地域に密着した信用組合としての役割がにじむ。信用組合は、中小企業等協同組合法などにもとづく協同組織で、組合員のための相互扶助を目的とする。造船の町の変化を、地元の事業者とともに引き受けている、ともいえる。

借り手にとっての意味

積極的に貸し出す信用組合は、資金を必要とする地元の事業者にとって頼れる存在だ。とりわけ、産業が転換期にある町では、その事情を知る信組の支えは大きい。一方で、不良債権比率の高さは、その地域の事業者が厳しい局面にあることの裏返しでもある。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理している。

数字は、町の転換期を映す

預貸率89.6%という高さと、不良債権比率7.11%という高さの同居は、造船という基幹産業が大きく姿を変えるなかで、それでも地元に深く貸し続けてきた信組の姿を映している。よく貸すことと、焦げ付きを抱えることが、同じ一つの土地の事情から生まれている。数字は、その金融機関がどんな土地で、何とともに歩んできたかを語る。西海みずき信用組合の数字は、造船の町の転換期そのものだ。

本紀行には、同じ長崎県の福江信用組合も登場している。福江信組は、五島列島に根ざす、店舗わずか2という極小の信組だ。造船の町・佐世保を中心に貸すこの西海みずき信用組合(預貸率89.6%)と、海の向こうの五島列島に根ざす福江信用組合(預金145億円・店舗2)とを並べると、同じ長崎県でも、本土側の広い範囲を地盤とする信組と、海の向こうの離島に密着する極小信組とで、規模も広がりも大きく異なることが見えてくる。離島の極小信組の姿は、福江信用組合の記事もあわせてどうぞ。

各地の金融機関には、それぞれの土地の事情が刻まれた、それぞれの生き方がある。長崎県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、長崎県の地域金融機関のページもどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
佐世保市の造船業(佐世保重工業の沿革・新造船事業の休止と修繕改修への特化)、海上自衛隊・米海軍の基地、観光に関する記述=各種公開情報。
信用組合の制度(中小企業等協同組合法等にもとづく協同組織であること)に関する記述=関係法令および金融庁等の公開資料にもとづく一般的な説明。

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