観音寺信用金庫——紙と食の町で、信金は何を支えているのか
自己資本比率22.45%、預貸率48.7%。製紙と食品加工の集積する香川県観音寺に根ざす観音寺信用金庫。厚い自己資本と控えめな預貸率を、瀬戸内の地場製造業という土地から読む。
香川県観音寺市に本店を置く観音寺信用金庫は、香川県西部に根ざす信用金庫だ。預金3,817億円、店舗17。瀬戸内海に面した、ものづくりの盛んな土地に立っている。
観音寺を含む香川県西部は、地場の製造業が集積する地だ。ティッシュや紙器、加工紙といった製紙・紙製品の製造が盛んで、餃子や讃岐うどん、コロッケなどの食品加工の工場も数多い。瀬戸内の温暖な気候のもと、紙と食という二つの地場産業が、地域の経済を支えてきた。この「製紙と食品加工の集積する町」という土地柄が、観音寺信用金庫の数字を読む鍵になる。
この信用金庫の数字で目を引くのは、自己資本比率22.45%という厚みと、預貸率48.7%という控えめさだ。集めた預金の半分ほどを貸出に回している。地場製造業の盛んな土地でありながら、なぜ貸出を抑え、資本を厚く積むのか。その答えは、瀬戸内のものづくりの町という土地にある。
まず、数字を並べる
観音寺信用金庫の預金は3,817億円、貸出金は1,858億円、預貸率48.7%。自己資本比率は22.45%と厚い。不良債権比率は2.35%と低め。中小企業等向けの貸出先は9,028件。
| 預金 | 3,817億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 1,858億円 |
| 預貸率 | 48.7% |
| 自己資本比率 | 22.45% |
| 不良債権比率 | 2.35% |
| 中小企業等向け貸出先 | 9,028件 |
| 店舗 | 17店 |
厚い自己資本と低い不良債権。堅実な経営を、紙と食の町から読む。
22.45%と2.35%を、ものづくりの町から読む
自己資本比率22.45%という厚みと、不良債権比率2.35%という低さ。この二つは、合わせて読むと一つの経営の姿を描く。堅実に貸し、焦げ付きを抑えながら、資本を手厚く積んでいる。本紀行で見てきた、不良債権の高い信金とは対照的な、安定した経営だ。この背景には、観音寺という土地の産業がある。
観音寺信用金庫が貸す相手の多くは、地元の中小事業者だ。そのなかには、製紙・紙製品を手がける事業者、食品加工の事業者、そして瀬戸内の商業・サービス業が含まれると考えられる。紙も食品も、生活に密着した需要のある分野で、景気の波はあっても、極端に振れにくい。日々使われるティッシュや紙器、食卓に並ぶ加工食品は、安定した産業基盤を地域に与えてきた。こうした、比較的安定した地場製造業に堅実に貸す信用金庫では、不良債権比率が低めに保たれやすいと考えられる。
そのうえで、自己資本比率22.45%という厚みを保ち、預貸率を48.7%と控えめに抑えているのは、堅実さを旨とする経営の表れだろう。あふれた預金は運用に回しつつ、地元の安定した産業に過不足なく貸す。派手さはないが、足元の固い経営と読める。もちろん、これらの比率には個別の事情も絡むため断定はできないが、紙と食という安定した地場産業を抜きに、この数字は読めない。
なぜ、こうなったのか——制度と地域
観音寺信用金庫が地元に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度がある。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められている。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれない。
この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られる。観音寺信用金庫にとって、その「地元」とは、製紙と食品加工という地場製造業に支えられた香川県西部の地域経済そのものだ。安定した産業基盤を持つ土地で、堅実に貸し、厚く備えることが、この信金の生き方といえる。
借り手にとっての意味
厚い自己資本と低い不良債権を持つ信用金庫は、経営の安定という点で安心感がある。地元の製造業の事業者にとって、その産業を知る信金は身近な相談相手だ。預貸率が控えめなのは慎重さの表れだが、それは経営の堅実さの裏返しでもある。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理している。
数字は、土地の安定を映す
自己資本比率22.45%という厚みと、不良債権比率2.35%という低さは、紙と食という生活に密着した地場製造業に支えられ、堅実に地元を支えてきた信金の姿を映している。不良債権の高い土地もあれば、こうして安定した産業に恵まれた土地もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを語る。観音寺信用金庫の数字は、瀬戸内のものづくりの町の堅実さそのものだ。
各地の金融機関には、それぞれの土地の事情が刻まれた、それぞれの生き方がある。同じ香川県でも、県都の商業地に根ざす高松信用金庫は、不良債権がやや高く、瀬戸内のものづくりの町に立つ観音寺信用金庫とは対照的だ。あわせて読むと、同じ県でも土地の産業が違えば数字はこれだけ違うとわかる。また、県全体を覆う県内最大の地銀としては、114番目のナンバー銀行を源流とする百十四銀行がある。一つの地域に深く根ざす観音寺信用金庫と、県全体と瀬戸内に広く貸す百十四銀行とを並べると、香川県の金融の重層性が見えてくる。香川県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、香川県の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
観音寺市・香川県西部の製紙・紙製品、食品加工の地場産業に関する記述=各種公開情報。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。