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室蘭信用金庫——鉄の街の信金は、なぜ自己資本を極端に厚く積むのか

預貸率30.9%、自己資本比率27.68%。室蘭市に本店を置く室蘭信用金庫。鉄鋼の企業城下町・室蘭に根ざす信金が、預金の3割しか貸さず資本を極厚に積む数字を、産業構造の変化から読みます。

ニホン銀行紀行 ・ 北海道

北海道室蘭市に本店を置く室蘭信用金庫は、地元で「むろしん」と呼ばれる信用金庫です。預金3,533億円、貸出金1,090億円、店舗27。室蘭市を中心に、胆振(いぶり)地方の太平洋沿岸に根ざす信用金庫です。

本店のある室蘭市は、北海道を代表する工業都市です。天然の良港を持ち、明治期以降、製鉄・鉄鋼を中心とする重工業が集積した「鉄の街」「企業城下町」として発展してきました。鉄鋼・造船・機械といった重厚長大の産業が、室蘭の経済を支えてきた歴史があります。一方で、こうした重工業の街は、産業構造の変化や生産拠点の再編のなかで、長く人口減少と経済規模の縮小に直面してきた土地でもあります。この、産業構造の変化を抱える鉄の街という土地柄が、室蘭信用金庫の数字を読む鍵になります。

この信用金庫の数字は、二つの点で際立っています。ひとつは預貸率30.9%——集めた預金の3割ほどしか貸出に回していない低さ。もうひとつは自己資本比率27.68%という、信用金庫としては極端な厚みです。なぜ、これほど貸さず、これほど資本を積むのか。その答えは、鉄の街という土地の歩みにあります。

まず、数字を並べる

室蘭信用金庫の預金は3,533億円、貸出金は1,090億円、預貸率30.9%。自己資本比率は27.68%と極めて厚い。不良債権比率は1.66%。中小企業等向けの貸出先は8千件を超えます。

室蘭信用金庫(令和7年3月末)
預金3,533億円
貸出金1,090億円
預貸率30.9%
自己資本比率27.68%
不良債権比率1.66%
中小企業等向け貸出先8,003件
店舗27店

預貸率30.9%・自己資本27.68%。貸さず、厚く積む。その姿を鉄の街から読む。

30.9%と27.68%を、鉄の街から読む

預貸率30.9%という低さと、自己資本比率27.68%という厚み。この二つは、合わせて読むと一つの経営の姿を描きます。集めた預金の多くを貸出に回さず、有価証券などの運用と、分厚い自己資本にあてている。守りを固める信金の典型的な姿です。その背景には、室蘭という土地が歩んできた事情があります。

室蘭信用金庫が貸す相手は、室蘭・胆振地方の中小事業者と個人です。鉄鋼・重工業に連なる関連企業や下請け、地域の商業・サービス業、そして個人の住宅ローンが、その融資先に含まれます。だが、企業城下町の経済は、中核となる重工業の動向に左右されやすく、人口減少も進んできました。地域に旺盛な資金需要があふれているわけではない。預金は集まるが、貸せる先は限られる。あふれた預金が運用に向かい、預貸率が30.9%にとどまるのは、産業構造の変化を抱える地方都市の信金に共通する姿です。

自己資本比率27.68%という際立つ厚みは、こうした土地で生き残るための備えと読めます。地域経済の縮小や、中核産業の変動といった不確実性に耐えるため、資本を厚く積んで揺らがない経営基盤を築く。不良債権比率1.66%と低く保たれているのも、貸出を慎重に絞っていることの表れでしょう。守りを固めることで、変化する土地で安定を保ってきた——そう読むと、低い預貸率と極厚の自己資本が、一本の論理でつながります。もちろん、これらの比率には経営方針も絡むため断定はできませんが、産業構造の変化を抱える鉄の街という土地を抜きに、この数字は読めません。

室蘭信用金庫が示すのは、産業構造の変化を抱える鉄の街で、貸出を絞り資本を厚く積んで守る信金の姿です。預金の3割しか貸さず、自己資本比率は27.68%。低い預貸率と極厚の資本は、企業城下町の不確実性に耐えるための備えと読めます。

同じ北海道で、別の地方都市の信金と並べてみる

本紀行には、同じ北海道の留萌信用金庫も登場しています。留萌信金は、日本海側の港町・留萌に根ざし、人口減の進む地域で守りを固める信金でした。鉄鋼の企業城下町・室蘭に根ざす室蘭信用金庫(預貸率30.9%・自己資本27.68%)と、日本海の港町に根ざす留萌信用金庫とを並べると、広い北海道のなかでも、太平洋側の工業都市と日本海側の港町とで、それぞれの土地の事情を抱えながら、ともに守りを固める信金の姿があることが見えてきます。北海道のもう一つの地方都市の信金は、留萌信用金庫の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

厚い自己資本を持つ信用金庫は、経営の安定という点では安心感があります。一方、預貸率が低めであることは、新たな貸出には慎重な面があるとも読めます。ただし、地元の中小事業者にとって、土地の事情を知る信金は身近な相談相手です。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、企業城下町の歩みを映す

預貸率30.9%という低さと、自己資本比率27.68%という厚みは、鉄鋼の企業城下町として栄え、産業構造の変化を抱えてきた室蘭に根ざし、守りを固めて地域とともに歩んできた信金の姿を映しています。資金需要のあふれる土地の信金もあれば、室蘭信用金庫のように変化を抱える土地で守りを固める信金もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、どんな歩みを重ねてきたかを語ります。室蘭信用金庫の数字は、鉄の街を支える信金「むろしん」の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地と産業の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。北海道の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、北海道の地域金融機関のページもどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
室蘭信用金庫の地盤(室蘭市本店、胆振地方の太平洋沿岸を地盤とすること)に関する記述=室蘭信用金庫および各種公開情報にもとづく。
室蘭市の産業(天然の良港、明治期以降の製鉄・鉄鋼を中心とする重工業の集積、企業城下町としての発展、人口減少)に関する記述=各種公開情報。
留萌信用金庫の位置づけ=各種公開情報および本紀行既出記事。

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