名古屋銀行——地銀のない街で、第二地銀は何に貸すか
預貸率83.5%、預金4.8兆円、中小残高3.3兆円。名古屋市に本店を置く名古屋銀行。地方銀行協会加盟の地銀が存在しない愛知で、第二地銀ながら屈指の規模を持つ「名銀」が、ものづくりの街で貸す姿を読みます。
愛知県名古屋市中区に本店を置く名古屋銀行は、地元で「名銀(めいぎん)」と呼ばれる第二地方銀行です。預金4兆7,972億円、貸出金4兆0,055億円、店舗114。第二地銀でありながら全国でも屈指の規模を持ち、中小企業等向けの貸出残高は3兆2,876億円にのぼります。
本拠地の愛知・名古屋は、日本のものづくりの中心地のひとつです。自動車を頂点に、機械・部品・金型などの製造業が幾層もの下請け構造をなして集積し、無数の中小製造業がひしめく土地です。この層の厚いものづくりの街という地盤と、愛知という土地ならではの「ある事情」が、名古屋銀行の数字を読む鍵になります。
名古屋銀行の歩みは、1949年に共和殖産として設立され、名古屋殖産無尽、名古屋相互銀行を経て、1989年に普通銀行へ転換して名古屋銀行となりました。無尽・相互銀行を源流とする、典型的な第二地銀の成り立ちです。ただ、その立場はやや特殊です。愛知県には、全国地方銀行協会に加盟する、いわゆる「地方銀行」が本店を置いていません。かつての地元有力行・東海銀行はメガバンク(現・三菱UFJ銀行)に統合され、地銀協加盟の地銀が県内に存在しない。そのため、第二地銀である名古屋銀行が、県内で旧東海銀行系のメガバンクに次ぐシェアを持ち、第二地銀のなかでも全国上位の規模を誇ります。数字の面で目を引くのは、預貸率83.5%という高さです。
まず、数字を並べる
名古屋銀行の預金は4兆7,972億円、貸出金は4兆0,055億円、預貸率83.5%。自己資本比率は11.47%、不良債権比率は1.97%。中小企業等向けの貸出残高は3兆2,876億円にのぼります。
| 預金 | 4兆7,972億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 4兆0,055億円 |
| 預貸率 | 83.5% |
| 自己資本比率 | 11.47% |
| 不良債権比率 | 1.97% |
| 中小企業等向け貸出残高 | 32,876億円 |
| 店舗 | 114店 |
預貸率83.5%・中小残高3.3兆円。地銀なき街で中小に貸す第二地銀の数字。
83.5%を、ものづくりの街と「地銀なき愛知」から読む
預貸率83.5%は、地方銀行・第二地銀のなかでもかなり高い水準です。集めた預金の8割超を貸出に回している。ものづくりの街・名古屋に、旺盛な資金需要があることの表れと読めます。
名古屋銀行が貸す相手は、愛知のものづくりを支える中小企業です。自動車関連の部品・機械・金型メーカー、その下請け、地域の商業・サービス業が、その融資先の中心です。中小企業等向けの貸出残高が3兆2,876億円と、貸出金の大半を占めることが、この銀行が地域の中小製造業に深く貸し込んでいることを示しています。日本有数の製造業集積地である愛知は、設備投資も運転資金も需要が大きく、貸し先に事欠かない。これが、預貸率83.5%という高さを支えていると読めます。
そして見逃せないのが、「地銀なき愛知」という事情です。愛知県には地銀協加盟の地方銀行が本店を置かず、地元有力行はメガバンクに統合されました。本来なら地銀が担うような県内中小企業のメインバンク機能の一角を、第二地銀である名古屋銀行が引き受けてきた。第二地銀でありながら全国屈指の規模を持つのは、この特殊な事情ゆえと読めます。不良債権比率1.97%は、これだけ貸しながら低めに抑えられた水準で、層の厚い愛知の製造業に貸し先が分散していること、そして地元企業を知り抜いた目利きの表れと読めます。自己資本比率11.47%という厚みとあわせて、よく貸しながらも守りを保つ経営がうかがえます。もちろん、これらの比率には経営方針や景気も絡むため断定はできませんが、ものづくりの街・名古屋という地盤と、地銀なき愛知という事情を抜きに、この数字は読めません。
第二地銀という立場から読む
第二地方銀行は、その多くが無尽や相互銀行を源流とし、戦後に普通銀行へ転換して生まれました。多くの県では、先に地方銀行があり、第二地銀はそれに次ぐ立場から出発します。ところが愛知は事情が違いました。地銀協加盟の地銀が存在しないため、第二地銀の名古屋銀行が、他県なら地銀が占めるような位置にまで規模を伸ばしたのです。第二地銀でありながら預金4.8兆円・貸出4兆円という規模は、地銀の上位行に匹敵します。立場は第二地銀でも、地域で果たす役割は地銀そのもの——名古屋銀行は、土地の事情が金融機関の姿を決めることを示す一例といえます。なお名古屋銀行は、岐阜の地銀である十六銀行などと業務提携を結び、ATMの相互利用などで連携しています。
同じ中部で、地銀と並べてみる
本紀行には、隣県・岐阜の地方銀行である十六銀行も登場しています。十六銀行は明治のナンバー銀行を源流とする生粋の地銀で、名古屋銀行とは業務提携の関係にもあります。地銀なき愛知で地銀的な役割を担う第二地銀・名古屋銀行(預貸率83.5%)と、岐阜で県を代表する地銀・十六銀行とを並べると、同じ中部の製造業地帯で、立場の異なる二つの銀行がどう中小企業に貸してきたかが見えてきます。生粋の地銀と、地銀的な第二地銀——中部のものづくりを支える銀行の姿は、十六銀行の記事もあわせてどうぞ。
借り手にとっての意味
名古屋銀行は、愛知の中小製造業にとって、メインバンクになりうる身近な選択肢です。地銀なき愛知で、地銀的な役割を担ってきた厚みがあります。高い預貸率は積極的に貸す姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、土地の事情を映す
預貸率83.5%という高さと、第二地銀ながら全国屈指の規模は、ものづくりの街・名古屋に根ざし、地銀なき愛知で地銀的な役割を担ってきた銀行の姿を映しています。地銀に次ぐ立場に徹する第二地銀もあれば、名古屋銀行のように土地の事情から地銀的な位置に立つ第二地銀もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、どんな役割を担ってきたかを語ります。名古屋銀行の数字は、地銀のいない街で中小製造業を支える「名銀」の、いまの記録です。
各地の金融機関には、それぞれの土地と立場の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。愛知県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、愛知県の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
名古屋銀行の沿革(1949年に共和殖産として設立、名古屋殖産無尽・名古屋相互銀行を経て1989年に普通銀行へ転換し名古屋銀行へ改称、本店は名古屋市中区)、愛知県に全国地方銀行協会加盟の地方銀行が本店を置いていないこと、県内で旧東海銀行系のメガバンクに次ぐシェアを持ち第二地銀で全国上位の規模であること、十六銀行などとの業務提携に関する記述=名古屋銀行および各種公開情報にもとづく。
愛知県・名古屋の産業(自動車を中心とするものづくりの集積、中小製造業の下請け構造)に関する記述=各種公開情報。
十六銀行の位置づけ=各種公開情報および本紀行既出記事。
第二地方銀行の一般的な成り立ち(無尽・相互銀行を源流とする等)に関する記述=一般的な金融制度の説明にもとづく。