創業支援保証とは
実績のない創業期に、どうやって融資を受けるか。信用保証協会の創業支援の保証制度は、かつては有名無実とも言われましたが、今では普通に使われています。3つの制度の違いと、経営者の連帯保証がいらない枠、そして「再挑戦」の保証が実際には誰のためのものなのかを、実務の目線で整理します。
創業支援保証とは何か
創業支援保証とは、信用保証協会が用意している、創業をする人・創業して間もない人のための保証制度の総称です。事業を始めたばかりの段階では、当然ながら経営の実績がありません。決算書もまだ無いか、あっても数期ぶん。銀行から見れば、返済能力を測る材料が乏しく、本来なら最も貸しにくい相手です。その創業期のハードルを、保証協会が保証人になることで越えやすくする――それが、この制度の役割です(保証の基本的な流れは信用保証協会の仕組みをご覧ください)。
一つ、認識を新しくしておきたい点があります。古い常識では、創業者向けの保証など有名無実だ、と言われた時代もありました。制度はあっても、実際には使いにくく、絵に描いた餅のように見られていた。ですが今は違います。創業支援の保証は、普通に利用されています。創業期の資金調達を考えるなら、現実的な選択肢として、まず知っておくべきものになっています。
創業を支える、3つの保証
創業支援の保証は、大きく3つに分かれます。いずれも保証限度額は3,500万円で、併用も可能ですが、その場合は3つの合計で3,500万円が上限になります。
| 創業関連保証 | 個人による創業や、新たに法人を設立して行う事業の資金に使える、基本となる保証。事業未経験の個人がこれから創業する場合や、創業・設立から5年未満の場合などが対象。 |
|---|---|
| 再挑戦支援保証 | 過去に事業の廃止や会社の解散を経験した人の、再チャレンジを支援する保証。創業関連保証と違い、分社化による創業には使えない。 |
| スタートアップ創出 促進保証制度 | 保証料率に0.2%を上乗せすることで、経営者が会社の連帯保証人にならなくてよい保証。個人保証のリスクを負わずに創業したい人向け。 |
創業時は実績がないため、いずれの保証でも創業計画書が必要になります。これがそのまま審査の土台になります。ひな形が用意されているので、何を書けばよいか分からなくても、相談しながら作っていけます。なお、市区町村が実施する「認定特定創業支援等事業」の支援を受けて創業する場合は、いくつかの要件が緩和されます。
連帯保証なしで創業できる枠
3つのなかで、近年とくに知っておく価値があるのが、スタートアップ創出促進保証制度です。これは、保証料率に0.2%を上乗せする代わりに、経営者個人が会社の連帯保証人にならなくてよいという保証です。
従来、中小企業の融資では、経営者個人が連帯保証人になるのが当たり前でした。会社が返せなければ、経営者が個人の財産で返す――この個人保証が、創業に踏み出す足を重くしてきた面があります。万一うまくいかなかったときに、個人まで巻き込まれるのが怖い、と。その重しを、わずかな料率の上乗せで外せるのが、この枠です。創業の失敗が個人の破滅に直結しにくくなる。これは、創業を考える人にとって小さくない意味を持ちます。
「再挑戦支援」は、実際には誰のためか
3つのなかで、名前と実際の使われ方にギャップがあるのが、再挑戦支援保証です。名前だけ見れば「一度失敗した人を広く支える保証」のように聞こえますが、実務上は、対象がかなり限られます。
結論から言えば、これは法的整理を経た人のための保証です。ここを正確に理解しておく必要があります。過去に事業がうまくいかず、保証協会に代わりに返済してもらった債務(求償債務)が残っている人が、自己破産や民事再生といった法的整理できちんと決着をつけずに放置している場合、その履歴は消えません。そしてその状態では、保証協会は保証をしません。何年待っても、です。整理という決着をつけていない限り、再挑戦の土俵にすら上がれない、というのが実務の現実です。
これは制度を悪く言うためではなく、誤解したまま期待して時間を無駄にしないために、知っておくべきことです。過去の債務を放置したまま「再挑戦支援があるから大丈夫」と考えるのは、出発点から成り立ちません。まず必要なのは、過去にきちんと決着をつけること。その上で初めて、再挑戦の制度が視野に入ってきます。
創業を考えるなら、まず知っておく
創業支援の保証は、かつての「有名無実」という評価を脱し、今では創業期の現実的な資金調達手段になっています。基本となる創業関連保証、連帯保証を外せるスタートアップ創出促進保証、そして法的整理を経た人の再起のための再挑戦支援保証。それぞれ向く相手が違います。創業計画書という土台を整え、自分がどの保証に当てはまるのかを知ること。その上での相談先は、保証協会ではなく、まず取引を考えている銀行の窓口が正解です。創業期でまだ取引銀行がない場合も、まずは融資を受けたい銀行に足を運ぶ。保証協会は、その融資を成り立たせるために後ろで動く存在だからです(この順序は信用保証協会の仕組みで詳しく解説しています)。
出典:創業関連保証・再挑戦支援保証・スタートアップ創出促進保証制度の対象・保証限度額・併用上限・連帯保証・創業計画書・認定特定創業支援等事業に関する記述=全国信用保証協会連合会「創業をお考えの方」(zenshinhoren.or.jp)。
本記事の実務的な記述(かつての評価と現在の利用状況、再挑戦支援保証の実際の対象と利用の難しさ等)は、中小企業金融の実務知見にもとづく一般的な解説です。具体的な要件・制度内容は信用保証協会の公開情報によりますが、実際の融資・保証の相談は取引銀行の窓口へ。