¥Today 初めての銀行取引HowTo

売上は、一つの口座に集める——通帳は、何を語るか

語った数字が事実であることを、動かしようのない通帳で裏づける。それが、集約の本当の意味です。なぜ売上を一行に集めると信用になるのか。そして銀行員は、通帳のどこを見ているのか。掘り下げます。

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はじめに——これは「地方の金融機関」共通の話

この記事も信用金庫を例に説明する箇所がありますが、出資金や会員制度といった信用金庫(信用組合)ならではの要素を除けば、ここで述べる手続き・心得は、地方銀行・信用金庫・信用組合のいずれでも共通するフローだと思ってください。都市銀行(メガバンク)を別にすれば、地域の金融機関との付き合い方は、おおむね同じ作法で通ります。

なぜ、一つの口座に集めるのか

口座を育てる話のなかで、売上の入金は取引したい一行に集める、と書きました。なぜ集約が効くのか。ここを掘り下げます。

たとえば、年に一億円の売上があるとします。これを十の銀行に分散して入れていたら、一つの銀行から見えるのは、一千万円分にすぎません。残りの九千万円は、その銀行にとって存在しないも同然です。

考えてみてください。目の前にあるのは小さな数字。口から出てくるのは大きな話。しかも相手は、初めて取引する人。あなたに得がある構図には見えません。「うちは一億円の商売です」と言葉で言っても、通帳に一千万円しか映っていなければ、それを裏づけられないのです。

決算書はあります。けれど、自分で作れる決算書と、振り込みがなければ作れない入金履歴とでは、わけが違います。とりわけ初めての取引においては、後者がものを言います。

たとえば政策金融公庫に融資を申し込むようなときにも、この習慣が決定打になります。申し込みには通帳の写しを持参する必要があり、そこに売上がきちんと流れている履歴があるかどうかが、そのまま見られるからです。日ごろ一行に集約しておくことが、いざという場面でそのまま効いてきます。

ここに、集約の本質があります。書類や口頭で語った数字が事実であることを、動かしようのない現実で裏づける。これが、信用を強化する最良の手段です。一つの口座にすべての売上が流れていれば、「一億円の商売」は言葉ではなく、通帳の上の事実になります。

銀行員は、通帳のどこを見ているか

では、集約された通帳を、銀行員はどう読むのか。見ているポイントは、はっきりしています。

第一に、入金元です。誰からお金が入っているか。もし東証プライム上場の企業や、自治体、政府機関からの入金があれば、それだけで信用の補完になります。そうした相手と継続して取引できているということは、その企業ならではの強みがしっかりあり、今後も業容の拡大が期待できる——そう読めるからです。こうした取引先があるなら、集約された通帳の上で、それははっきりと相手に伝わります。もちろん、そうした大口の取引先がなくても問題ありません。大切なのは、入金の素性が見える状態にあることです。

第二に、入金の件数です。たとえば「年間三十棟を手がける地域のハウスメーカーです」と言っているのに、通帳の入金回数が年に七回しかなければ、明らかに不自然です。語っている事業の規模と、通帳に表れる入出金の回数。この二つが食い違っていれば、相手は引っかかります。逆に、商売の実態と通帳の動きが一致していれば、それ自体が何よりの説明になります。

第三に、出納のつじつまです。お金の出入りの帳尻が合っているかどうかは、必ず見られています。入ってくるお金と出ていくお金の流れに、説明のつかない不自然さがないか。ここは、隠しようがありません。

つまり、集約とは、ただ一行に資金を集めることではありません。あなたの商売の素性を、通帳という動かせない記録の上に、正直に映し出すことなのです。

つまずきやすいところ——まず、自分の立場を客観視する

最後に一つ。複数の銀行に分けて取引したほうが有利だ、駆け引きの余地が生まれる、と考える人がいます。

けれど、駆け引きが通じるのは、自分の立場が相手より上のときだけです。これから取引を始め、これから借りようという段階では、その前提は成り立ちません。そもそも駆け引きはおすすめしませんが、まず躓かないための第一歩は、自分が今どういう立場にいるのかを、客観的に見ることです。

立場を冷静に見れば、答えは自ずと出ます。最初は、素性を正直に見せること。小細工ではなく、事実を積み上げること。それが、いちばん早い近道です。

本記事は一般的な銀行取引の考え方を示すものです。具体的な取扱いや判断は、各金融機関の窓口および各分野の専門家にご確認ください。

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