¥Today ニホン銀行紀行

荘内銀行——庄内に根ざし、再編に挑む地銀は何に貸すか

預貸率74.2%、預金1.3兆円、不良債権比率1.87%。庄内地方を地盤とする荘内銀行。山形県唯一の国立銀行を前身とし、秋田の北都銀行との合併を控えた地銀が、庄内の地で貸す姿を読みます。

ニホン銀行紀行 ・ 山形県

山形県の庄内地方を地盤とする荘内銀行は、地元で「荘銀(しょうぎん)」と呼ばれる地方銀行です。預金1兆3,128億円、貸出金9,739億円、店舗89。金融庁データの時点では本店を鶴岡市に置いていました(2025年5月に山形市へ移転)。庄内地方の鶴岡市・酒田市の指定金融機関——公金を扱う銀行——を受託しています。

地盤の庄内地方は、山形県の日本海側に広がる一帯です。最上川の河口に開け、庄内平野は全国有数の米どころ。鶴岡・酒田は北前船の寄港地として栄えた歴史を持ち、農業と食品関連の産業が根を張る土地です。山形県は内陸の村山・置賜と、日本海側の庄内とで地域がはっきり分かれ、荘内銀行はその庄内を本拠としてきました。この米どころ・庄内という地盤と、再編に挑む歩みが、荘内銀行の数字を読む鍵になります。

荘内銀行の歩みは、1878年創業の第六十七国立銀行にさかのぼります。これは山形県で唯一、国立銀行を前身とする銀行でした。戦時下の銀行統合により1941年に荘内銀行として設立されました。近年は再編に積極的で、秋田県を地盤とする北都銀行とともにフィデアホールディングスを構成し、2027年1月には両行が合併して「フィデア銀行」となることが決まっています。本店の山形市移転も、この合併を見据えたものです。資金量では地銀のなかで小さい方ですが、早くから投資信託や生命保険の販売に力を入れてきたことで知られます。数字の面で目を引くのは、預貸率74.2%という水準です。

まず、数字を並べる

荘内銀行の預金は1兆3,128億円、貸出金は9,739億円、預貸率74.2%。自己資本比率は10.39%、不良債権比率は1.87%。中小企業等向けの貸出残高は6,563億円にのぼります。

荘内銀行(令和7年3月末)
預金1兆3,128億円
貸出金9,739億円
預貸率74.2%
自己資本比率10.39%
不良債権比率1.87%
中小企業等向け貸出残高6,563億円
店舗89店

預貸率74.2%・不良債権1.87%。庄内に根ざし再編に挑む地銀の数字。

74.2%を、庄内と再編から読む

預貸率74.2%は、地方銀行として標準よりやや高めの水準です。集めた預金の7割超を貸出に回している。資金量では小さい部類の地銀ながら、地元・庄内にしっかり資金を流していることの表れと読めます。

荘内銀行が貸す相手は、庄内地方を中心とする山形県内の事業者と個人です。庄内平野の農業や食品関連産業、鶴岡・酒田の商業、地域の中小企業、住宅ローンが、その融資先に含まれます。店舗網は庄内だけでなく山形県内各地や隣接する宮城県・福島県、東京都にも広がっています。預貸率74.2%という水準は、米どころ・庄内という地盤で、地域の資金需要をしっかり引き受けてきたことを示します。一方で、人口減少の進む地方の地銀として、貸出だけに頼らず早くから投資信託や生命保険の販売に注力し、預かり資産ビジネスで収益の幅を広げてきたのも、この銀行の特徴です。

不良債権比率1.87%は、地銀として標準的な水準です。庄内の農業・食品から県内外の中小企業まで貸し先が分散していること、地域を知り抜いた目利きの表れと読めます。自己資本比率10.39%という相応の厚みとあわせて、規模は大きくないながらも安定した経営がうかがえます。注目すべきは、荘内銀行が単独での生き残りではなく、北都銀行との合併という再編の道を選んだことです。人口減少が進む東北で、二つの県の地銀が一つになって規模を確保し、広域地銀として生き残りを図る。2027年の「フィデア銀行」発足は、その選択の到達点です。もちろん、これらの比率には経営方針や景気も絡むため断定はできませんが、米どころ・庄内という地盤と、再編に挑む歩みを抜きに、この数字は読めません。

荘内銀行が示すのは、米どころ・庄内に根ざしつつ、再編で生き残りを図る地銀の姿です。地元にしっかり貸しながら預かり資産にも注力し、隣県の北都銀行との合併で広域地銀をめざす。74.2%という水準は、地域に貸す力と、再編に挑む歩みの両方を映していると読めます。

同じ山形の地銀と並べてみる

本紀行には、同じ山形県の山形銀行も登場しています。山形銀行は内陸の県都・山形市に本店を置く県の代表的地銀で、単独での歩みを続けています。内陸の山形銀行と、庄内の荘内銀行(預貸率74.2%)とは、同じ山形県を、内陸と日本海側とで分け合いながら、単独と再編という対照的な道を歩んでいることになります。一つの県のなかで、地域も戦略も異なる二つの地銀——両者を並べると、人口減の県で地銀が選んだ別々の生き方が見えてきます。山形のもう一方の地銀の姿は、山形銀行の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

庄内の地銀は、地域の事業者にとって、もっとも身近な選択肢のひとつです。とりわけ荘内銀行は、投信や保険など資産運用の相談にも幅広く応じてきた厚みがあります。合併を控えていても、地域に根ざして貸すという役割は変わりません。預貸率は貸出への姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、庄内と再編を映す

預貸率74.2%という水準は、米どころ・庄内に根ざし、山形県唯一の国立銀行を前身として、いま再編による生き残りに挑む地銀の姿を映しています。単独を貫く地銀もあれば、荘内銀行のように合併で規模を求める地銀もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、どんな選択をしてきたかを語ります。荘内銀行の数字は、庄内を背負って新たな一歩に向かう「荘銀」の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地と選択の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。山形県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、山形県の地域金融機関のページもどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。本店所在地は同データ時点で鶴岡市。
荘内銀行の沿革(1878年創業の第六十七国立銀行を前身とし山形県唯一の国立銀行前身、戦時統合により1941年設立、庄内地方が地盤、鶴岡市・酒田市の指定金融機関、北都銀行とフィデアホールディングスを構成、2025年5月に本店を鶴岡市から山形市へ移転、2027年1月に北都銀行と合併し「フィデア銀行」となる予定、投信・生保販売に注力)に関する記述=荘内銀行・フィデアホールディングスおよび各種報道(日本経済新聞等)・公開情報にもとづく。
庄内地方の地理と産業(庄内平野の米どころ、鶴岡・酒田、北前船、農業・食品)に関する記述=各種公開情報。
山形銀行の位置づけ=各種公開情報および本紀行既出記事。

← ニホン銀行紀行へ | ¥Today トップへ