倉吉信用金庫——梨と白壁の町で、信金は何を抱えているのか
不良債権比率6.92%、自己資本比率18.53%。二十世紀梨と白壁土蔵の町・鳥取県倉吉に根ざす倉吉信用金庫。やや高い不良債権と厚い自己資本を、園芸農業と人口の少ない土地から読む。
鳥取県倉吉市に本店を置く倉吉信用金庫は、鳥取県中部に根ざす信用金庫だ。預金855億円、店舗11。日本でいちばん人口の少ない県の、その中部の小さな都市に立っている。
倉吉を含む鳥取県中部は、園芸農業と観光の地だ。鳥取といえば二十世紀梨で、県は梨の栽培面積で全国上位を誇り、すいかやらっきょう、白ねぎといった園芸作物も盛んに作られる。倉吉の市街には、玉川沿いに白壁土蔵群が残り、赤い石州瓦と白い漆喰壁の町並みが重要伝統的建造物群保存地区に選ばれている。人口約4万の小さな町だが、農業と歴史的な町並みが地域を支えてきた。この「園芸農業と、人口の少ない土地」という土地柄が、倉吉信用金庫の数字を読む鍵になる。
この信用金庫の数字で目を引くのは、不良債権比率6.92%というやや高めの水準と、自己資本比率18.53%という厚みだ。預貸率は49.3%で、集めた預金のおよそ半分を貸出に回している。この組み合わせを、鳥取という土地から読むと、人口の少ない地方の信金の姿が見えてくる。
まず、数字を並べる
倉吉信用金庫の預金は855億円、貸出金は421億円、預貸率49.3%。自己資本比率は18.53%と厚い。不良債権比率は6.92%。中小企業等向けの貸出先は4,501件。
| 預金 | 855億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 421億円 |
| 預貸率 | 49.3% |
| 自己資本比率 | 18.53% |
| 不良債権比率 | 6.92% |
| 中小企業等向け貸出先 | 4,501件 |
| 店舗 | 11店 |
やや高い不良債権と、厚い自己資本。その姿を、梨と白壁の町から読む。
6.92%と18.53%を、人口の少ない土地から読む
不良債権比率6.92%というやや高めの数字と、自己資本比率18.53%という厚み。この二つは、合わせて読むと一つの経営の姿を描く。変動を抱える地元の事業者に貸す一方で、いざというときに備えて資本を厚く積んでいる。この背景には、人口の少ない鳥取という土地の事情がある。
倉吉信用金庫が貸す相手の多くは、地元の中小事業者だ。そのなかには、二十世紀梨をはじめとする園芸農業の関係者、白壁土蔵の町並みを訪れる観光に支えられた事業者、そして人口の少ない地域で商いを続ける商店・建設・サービス業が含まれると考えられる。園芸農業は、天候や相場、そして担い手の高齢化に左右されやすい。人口減少が進む地域では、事業の縮小や後継者不在も避けられない。こうした、変動を抱える農業と、人口の少ない地域の事業者に貸す信用金庫では、不良債権比率が高めに出やすいと考えられる。
だからこそ、倉吉信用金庫は自己資本比率18.53%という厚みを保ってきたと読める。振れの大きい土地で地元に貸し続けるには、焦げ付きに耐えられるだけの資本がいる。預貸率を49.3%と半分ほどに抑え、あふれた預金を運用に回しながら、守りを固める——人口の少ない地方で長く生き残るための、堅実な経営の形だ。もちろん、不良債権比率には個別の事情も絡むため断定はできないが、園芸農業と過疎という鳥取の土地を抜きに、この数字は読めない。
なぜ、こうなったのか——制度と地域
倉吉信用金庫が地元に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度がある。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められている。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれない。
この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られる。倉吉信用金庫にとって、その「地元」とは、二十世紀梨の園芸農業と白壁土蔵の町並みを抱え、人口の少ない鳥取県中部の地域経済そのものだ。限られた借り手の土地で、堅実に貸し、厚く備えることが、この信金の生き方といえる。
借り手にとっての意味
厚い自己資本を持つ信用金庫は、経営の安定という点では安心感がある。地元の園芸農業の関係者や小さな事業者にとって、地域の事情を知る信金は身近な相談相手だ。一方で、不良債権比率の高さは、その地域の事業者が課題を抱えていることの裏返しでもある。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理している。
数字は、土地の条件を映す
不良債権比率6.92%と自己資本比率18.53%という数字は、二十世紀梨の園芸農業と白壁土蔵の町並みに支えられ、人口の少ない土地で堅実に地元を支えてきた信金の姿を映している。同じ地方の信金でも、それぞれの土地が抱えるものは違う。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを語る。倉吉信用金庫の数字は、日本でいちばん人口の少ない県の、その中部の今そのものだ。
本紀行には、同じ鳥取県の米子信用金庫も登場している。米子信金は、「山陰の商都」と呼ばれる県西部の中心都市・米子に根ざす信金だ。県中部の倉吉に根ざすこの倉吉信用金庫と、県西部の商都・米子に根ざす米子信用金庫(預貸率67.6%)とを並べると、同じ鳥取県でも、それぞれの地域を地盤とする信金が、山陰という共通の条件のなかで地域を支えていることが見えてくる。県西部の商都の信金の姿は、米子信用金庫の記事もあわせてどうぞ。
各地の金融機関には、それぞれの土地の事情が刻まれた、それぞれの生き方がある。鳥取県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、鳥取県の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
鳥取県中部・倉吉市の二十世紀梨をはじめとする園芸農業、白壁土蔵群(重要伝統的建造物群保存地区)・観光、人口に関する記述=鳥取県・倉吉市・農林水産省等の公開情報。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。