静岡銀行——全国屈指の優良地銀は、ものづくり県で何に貸すか
預貸率89.6%、預金12.0兆円、不良債権比率0.85%。静岡市に本店を置く静岡銀行。全国屈指の優良地銀と呼ばれる「しずぎん」が、ものづくり県・静岡でよく貸し、焦げ付きを低く抑える姿を読みます。
静岡県静岡市に本店を置く静岡銀行は、地元で「しずぎん」と呼ばれる地方銀行です。預金11兆9,847億円、貸出金10兆7,350億円、店舗207。地方銀行のなかでも有数の規模を持ち、長く全国屈指の優良地銀と評されてきた銀行です。静岡県および県内の多くの自治体の指定金融機関——公金を扱う銀行——でもあります。
本拠地の静岡県は、東海道のほぼ中央に位置し、東西に長く伸びる県です。輸送用機器・電気機械・化学などの製造業が集積する全国有数のものづくり県であり、茶・みかんといった農業、富士山や伊豆をはじめとする観光まで、産業の裾野が広く厚い土地です。東名・新東名が貫く交通の要衝でもあり、首都圏と中京圏の双方に近い。この産業の厚いものづくり県という地盤が、静岡銀行の数字を読む鍵になります。
静岡銀行は、明治期の国立銀行や地域の銀行を源流とし、合併を重ねて静岡県を代表する地銀となりました。長年にわたり高い自己資本と低い不良債権比率を保ち、財務の健全性で全国の地銀のなかでも上位に位置づけられてきたことで知られます。近年は持株会社(しずおかフィナンシャルグループ)体制に移行しています。数字の面で目を引くのは、預貸率89.6%という高さと、不良債権比率0.85%という際立った低さです。
まず、数字を並べる
静岡銀行の預金は11兆9,847億円、貸出金は10兆7,350億円、預貸率89.6%。自己資本比率は12.55%、不良債権比率は0.85%。中小企業等向けの貸出残高は8兆2,119億円にのぼります。
| 預金 | 11兆9,847億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 10兆7,350億円 |
| 預貸率 | 89.6% |
| 自己資本比率 | 12.55% |
| 不良債権比率 | 0.85% |
| 中小企業等向け貸出残高 | 82,119億円 |
| 店舗 | 207店 |
預貸89.6%・不良債権0.85%。よく貸し、低く抑える優良地銀の数字。
89.6%と0.85%を、ものづくり県から読む
預貸率89.6%は、地方銀行のなかでもかなり高い水準です。集めた預金の9割近くを貸出に回している。そして同時に、不良債権比率は0.85%と、地銀のなかでも際立って低い。よく貸しながら焦げ付きが少ない——この両立こそが、静岡銀行が優良地銀と呼ばれてきた理由です。
静岡銀行が貸す相手は、静岡県内を中心とする事業者と個人です。輸送用機器や電気機械の製造業、その下請けを担う中小企業、地域の商業・サービス業、そして住宅ローンが、その融資先に含まれます。中小企業等向けの貸出残高8兆2,119億円という規模は、ものづくり県の事業者の資金需要を厚く引き受けてきたことを示しています。産業の裾野が広く、層の厚い経済を背景に、貸し先に事欠かないことが、預貸率89.6%という高さを支えていると読めます。
注目すべきは、これだけよく貸しながら不良債権比率が0.85%にとどまることです。産業が多様で、一つの業種に偏らず貸し先が広く分散していること、そして長年つちかってきた目利きと与信管理の確かさが、低い焦げ付きの背景にあると読めます。自己資本比率12.55%という地銀のなかでも高い厚みとあわせて、攻めと守りを高い次元で両立させている。もちろん、これらの比率には経営方針や景気も絡むため断定はできませんが、産業の厚いものづくり県という地盤と、堅実な経営の伝統を抜きに、この数字は読めません。
同じ静岡で、対照的な地銀と並べてみる
本紀行には、同じ静岡県のスルガ銀行も登場しています。スルガ銀行は独自路線で知られ、不正融資問題を経て不良債権比率8.56%という高めの数字を抱えていました。よく貸して焦げ付きの低い静岡銀行(預貸率89.6%・不良債権0.85%)と、独自路線でつまずきを経たスルガ銀行(不良債権8.56%)とを並べると、同じ静岡県を地盤とする地銀でも、貸し方と与信管理の違いが、これほど数字に出ることが見えてきます。堅実を貫いた地銀と、個性で攻めた地銀——両者を並べると、地銀の「貸す」という営みの幅が見えてきます。もう一方の静岡の地銀の姿は、スルガ銀行の記事もあわせてどうぞ。
借り手にとっての意味
全国屈指の優良地銀は、静岡の事業者にとって、もっとも頼れる選択肢のひとつです。よく貸す姿勢と確かな財務基盤は、地域を越えた取引を目指す企業にとっても心強いものです。高い預貸率は積極的に貸す姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、堅実の伝統を映す
預貸率89.6%という高さと、不良債権比率0.85%という低さは、産業の厚いものづくり県に根ざし、よく貸しながら堅実な与信を貫いてきた地銀の姿を映しています。攻めて焦げ付きを抱える銀行もあれば、静岡銀行のように攻めと守りを両立させる銀行もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、どんな経営を重ねてきたかを語ります。静岡銀行の数字は、ものづくり県を支える優良地銀「しずぎん」の、いまの記録です。
各地の金融機関には、それぞれの土地と経営の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。静岡県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、静岡県の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
静岡銀行の沿革(明治期の銀行を源流とし合併を重ねて静岡県を代表する地銀となったこと、長く全国屈指の優良地銀と評され高い自己資本と低い不良債権比率を保ってきたこと、しずおかフィナンシャルグループ体制、静岡県等の指定金融機関であること)に関する記述=静岡銀行および各種公開情報にもとづく。
静岡県の地理と産業(東海道の中央、輸送用機器・電気機械・化学等の製造業集積、茶・みかん、富士山・伊豆の観光、東名・新東名の要衝)に関する記述=各種公開情報。
スルガ銀行の位置づけ=各種公開情報および本紀行既出記事。