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埼玉縣信用金庫——信金で全国屈指の規模が、なぜ預貸率59%なのか

預金3兆2,262億円、店舗97、中小企業等への貸出先は9万を超える。信用金庫として全国屈指の規模を持つ埼玉縣信用金庫の預貸率は59.4%。地方銀行に迫るこの数字は、首都圏に近い埼玉北部の経済力に支えられています。

ニホン銀行紀行 ・ 埼玉県

埼玉県北部、熊谷市に本店を置く埼玉縣信用金庫は、地元で「さいしん」と呼ばれています。預金3兆2,262億円、貸出金1兆9,178億円、店舗97。信用金庫としては全国でも屈指の規模を持ち、熊谷を核に県北から県央、さらに県南へと広い支店網を張っています。

本店のある熊谷市は、埼玉県北部最大の経済拠点です。江戸時代には中山道の宿場町として栄え、いまは上越・北陸新幹線が停まる交通の要衝。市内には工業団地が整備され、製造品出荷額は県内有数、農業産出額も県内上位という、工業・商業・農業のそろった土地です。そして何より、東京という巨大市場が目と鼻の先にある。この首都圏近接という立地が、埼玉縣信用金庫の数字を読む鍵になります。

この信用金庫の預貸率は59.4%。集めた預金の6割近くを貸出に回している計算で、信用金庫としては高い部類に入ります。預金の1割も貸さない高知信用金庫(9.3%)のような運用型とは対極にあり、地方銀行の水準に迫ります。なぜ信金でこれだけ貸せるのか。その答えは、土地の経済力にあります。

まず、数字を並べる

埼玉縣信用金庫の預金は3兆2,262億円、貸出金は1兆9,178億円、預貸率59.4%。自己資本比率は9.07%。不良債権比率は1.57%で、信用金庫としては低い水準です。

埼玉縣信用金庫(令和7年3月末)
預金3兆2,262億円
貸出金1兆9,178億円
預貸率59.4%
自己資本比率9.07%
不良債権比率1.57%
中小企業等向け貸出先93,895先
店舗97店

中小企業等への貸出先は約9万4千先。一つの信金が抱える取引先として、全国でも屈指の数です。

59.4%を、首都圏近接の経済力から読む

信用金庫で預貸率59.4%は、かなり高い水準です。多くの信用金庫が30〜40%台にとどまるなかで、地方銀行に迫るこの数字を出せるのは、貸す相手がそれだけ豊富にいるからにほかなりません。

その背景にあるのが、埼玉北部の経済力です。熊谷をはじめとする県北は、工業団地に製造業が集積し、首都圏向けの近郊農業も盛ん。東京という巨大市場に近く、交通網も整っているため、設備投資や運転資金を求める中小事業者が厚く存在します。貸す動機が薄いから貸さないのではなく、貸す先が豊富にあるから貸せる——埼玉縣信用金庫の高い預貸率は、そう読むのが自然です。中小企業等への貸出先が9万を超えるという事実が、その裾野の広さを物語っています。

不良債権比率1.57%という低さも、これと地続きです。首都圏に近い多様な産業に幅広く貸せるということは、特定の業種の浮き沈みに比率が振り回されにくい、ということでもあります。もっとも、不良債権比率には景気や引当方針も絡むため、低さがそのまま盤石を意味するわけではありません。ただ、産業の厚みのある土地で広く貸す信金は、焦げ付きを分散しやすい傾向にある、とは言えると思われます。

規模が大きいほど、信金は信金でいられるのか

これだけの規模になると、一つの疑問が浮かびます。預金3兆円超、店舗97の巨大信金が、地方銀行と何が違うのか、と。

違いは、貸す相手の決まり方にあります。信用金庫が融資できるのは原則として「会員」であり、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の定める「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人に限られます。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。どれだけ規模が大きくなっても、貸す相手は地区内の中小事業者や住民に絞られる。この制度の枠があるからこそ、埼玉縣信用金庫は巨大であっても、地域の中小に貸す信金であり続けています。9万を超える中小貸出先という数字は、その制度の枠のなかで広げてきた裾野の表れです。

借り手にとっての意味

埼玉縣信用金庫のように、産業の厚い土地で高い預貸率を保つ信用金庫は、地域の中小事業者にとって、貸す体力と意欲の両方を備えた相手になりえます。預貸率が高いということは、それだけ実際に貸している、ということでもあるからです。ただし、それでも審査は審査であり、預貸率の数字だけで「借りやすさ」を測れるわけではありません。預貸率という指標の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、土地の体力を映す

預金の大半を運用に回す信金もあれば、自己資本を厚く積んで守る信金もあります。そして埼玉縣信用金庫のように、産業の厚い土地で地方銀行に迫るほど貸す信金もあります。預貸率という一つの数字は、その金融機関が立つ土地に、どれだけ貸す相手がいるかを映す鏡でもあります。首都圏に近い埼玉北部の信金が示す59.4%は、その土地の経済の体力そのものと読めます。

同じ埼玉北部を地盤にしながら、規模の小さい埼玉信用組合(本庄市・預金1,204億・店舗9)もあります。預金3.2兆円を誇るこの埼玉縣信用金庫と、埼玉北部の小さな借り手に向き合う信組とを並べると、同じ土地の金融の重層性が見えてきます。小さな信組の姿は、埼玉信用組合の記事もあわせてどうぞ。

各地の金融機関には、それぞれの土地の経済と事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。また、同じく信金として全国屈指の規模を持つ信金としては、京都の京都中央信用金庫(預金5.4兆円)があります。首都圏に近い産業の厚みを背に高い預貸率を保つ埼玉縣信用金庫と、古都の多様な産業に貸す京都中央信用金庫とを並べると、信金が制度の枠の中で全国最大級にまで育ったときの姿が見えてきます。もう一つの大規模信金の姿は、京都中央信用金庫の記事もあわせてどうぞ。埼玉県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、埼玉県の地域金融機関のページもどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
熊谷市・埼玉北部の経済(工業団地・製造品出荷額・農業・交通)に関する記述=熊谷市・埼玉県の公開情報等。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=信用金庫法10条1項、および金融庁・全国信用金庫協会の公開資料等。

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