沖縄海邦銀行——模合の島で生まれた銀行は、県内だけで何を支えるか
預貸率78.7%、不良債権比率2.75%。那覇市に本店を置く第二地方銀行・沖縄海邦銀行。無尽(模合)に源を持ち、県外に店舗を置かず沖縄県内だけで貸す「海銀(かいぎん)」の数字を、島の経済から読みます。
沖縄県那覇市に本店を置く沖縄海邦銀行は、地元で「海銀(かいぎん)」と呼ばれる第二地方銀行です。預金7,182億円、貸出金5,653億円、店舗50。沖縄本島を中心に、宮古島・石垣島にも支店を持ちますが、県外には店舗を一つも置いていません。沖縄という島のなかで完結する銀行です。
この銀行の源は、沖縄の庶民金融の伝統にあります。前身は戦後まもなく設立された無尽会社でした。無尽とは、仲間うちでお金を出し合い、順番に融通し合う相互扶助のしくみで、沖縄では「模合(もあい)」と呼ばれ、いまも人々の暮らしに根づいています。その無尽会社が相互銀行となり、1989年に普通銀行へ転換して、いまの沖縄海邦銀行になりました。島の助け合いの伝統から生まれ、銀行になってもなお県内だけに根を張る——この成り立ちが、海邦銀行の数字を読む鍵になります。
この銀行の数字で目を引くのは、預貸率78.7%という、しっかり高い水準です。集めた預金の8割近くを貸出に回しています。県内だけを地盤とする銀行が、なぜこれだけ貸せるのか。その答えは、沖縄という島の経済そのものにあります。
まず、数字を並べる
沖縄海邦銀行の預金は7,182億円、貸出金は5,653億円、預貸率78.7%。自己資本比率は10.03%、不良債権比率は2.75%。中小企業等向けの貸出残高は4,917億円にのぼります。
| 預金 | 7,182億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 5,653億円 |
| 預貸率 | 78.7% |
| 自己資本比率 | 10.03% |
| 不良債権比率 | 2.75% |
| 中小企業等向け貸出残高 | 4,917億円 |
| 店舗 | 50店 |
県外に店舗を持たず、沖縄県内だけで預金の8割近くを貸す。島で完結する銀行です。
78.7%を、沖縄の経済から読む
預貸率78.7%という高さは、沖縄県内に貸す相手が豊富にいることの表れです。県外に出ずとも、島のなかに資金需要がある。
沖縄の経済を支える柱のひとつは、観光です。国内外から多くの人が訪れる観光産業は、ホテルや飲食、土産物、レジャーなど、幅広い裾野の事業者を生みます。加えて、米軍基地に関連する経済、本土復帰以降に続いてきた公共事業や建設業、そして増える人口を背景とした住宅・不動産の需要——沖縄は、本土の地方県とは違って人口が増えてきた地域であり、資金需要が比較的旺盛です。海邦銀行が県内だけで預貸率78.7%を保てるのは、こうした島の経済の活力に支えられているからと読めます。県外へ貸出先を求めて出ていく必要が薄いほど、足元に貸す相手がいる、ということでもあります。
もっとも、観光や基地、公共事業に依存する経済は、外的な要因に左右されやすい一面も持ちます。感染症の流行で観光が止まれば、関連する事業者は大きな打撃を受ける。不良債権比率2.75%という水準は、第二地方銀行として極端に高くはないものの、こうした島の経済の振れやすさと無縁ではないと考えられます。もちろん、この比率には個別の事情や引当方針も絡むため、断定はできません。ただ、観光と基地と建設という沖縄経済の特徴を抜きに、海邦銀行の数字は読めません。
なぜ、こうなったのか——模合の島の銀行
沖縄海邦銀行が県内だけに根を張る銀行であることの背景には、その成り立ちがあります。模合という相互扶助の伝統のなかから生まれた無尽会社を源とし、相互銀行を経て普通銀行へと転換してきた歴史は、地元の庶民や中小事業者に寄り添う姿勢と分かちがたく結びついています。大きな資本の傘下に入って県外へ広げるのではなく、島の経済とともに歩む——その選択が、県外に店舗を持たない、沖縄だけの銀行という姿を形づくっています。沖縄には複数の地域金融機関がありますが、海邦銀行は、そのなかでも島の庶民金融の伝統を色濃く受け継ぐ一行といえます。
借り手にとっての意味
沖縄県内に深く根ざす銀行は、島の事業者にとって身近な相談相手です。観光業や建設業、地元の商店など、沖縄経済を担う中小事業者にとって、島の事情を知り抜いた銀行の存在は心強いものです。預貸率の高さは積極的に貸す姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、島の経済を映す
預貸率78.7%という高さは、観光と人口増に支えられた沖縄の経済のなかで、県外に出ることなく島の事業者に貸し続けてきた銀行の姿を映しています。グループの資金力を背景に貸す銀行もあれば、本拠地を越えて大都市に貸す銀行もある。そして海邦銀行のように、島のなかで完結し、その経済とともに生きる銀行もあります。数字は、その金融機関がどんな土地に根ざしてきたかを語ります。沖縄海邦銀行の数字は、模合の島に生まれた銀行の、いまの記録です。
本紀行には、同じ沖縄県のコザ信用金庫も登場しています。コザ信金は、本島中部の沖縄市に本店を置く、沖縄県内で唯一の信用金庫でした。模合の島に生まれ県内だけで貸すこの沖縄海邦銀行(預貸率78.7%)と、県内唯一の信金として中小に深く貸すコザ信用金庫(預貸率68.5%)とを並べると、本土から遠く離れた沖縄で、地銀と県内唯一の信金が、それぞれの立場で島の経済を支えていることが見えてきます。県内唯一の信金の姿は、コザ信用金庫の記事もあわせてどうぞ。
各地の金融機関には、それぞれの土地の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。沖縄県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、沖縄県の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
沖縄海邦銀行の沿革(無尽会社・相互銀行を経て1989年に普通銀行へ転換)、通称「海銀」、県内50店舗で県外に店舗を置かないこと、宮古島・石垣島への展開に関する記述=沖縄海邦銀行および各種公開情報にもとづく。
沖縄の模合(無尽)の伝統、観光・米軍基地関連・建設・人口動向を含む県経済に関する記述=各種公開情報。