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南都銀行——奈良唯一の地銀は、古都で何に貸すか

預貸率76.4%、預金5.9兆円、不良債権比率1.35%。奈良市に本店を置く南都銀行。奈良県唯一の地方銀行が、県内シェア5割を握りながら大阪・京都へも貸し先を広げる姿を、古都という土地から読みます。

ニホン銀行紀行 ・ 奈良県

奈良県奈良市に本店を置く南都銀行は、「南都」が古都・奈良の異称であるとおり、奈良に深く根ざした銀行です。預金5兆8,800億円、貸出金4兆4,932億円、店舗137。奈良県で唯一の地方銀行であり、県内のメインバンク企業数で約6割、融資シェアで約5割、預金シェアで約3割という、圧倒的な地位を占めています。奈良県や県内の多くの市町村の指定金融機関——公金を扱う銀行——でもあります。

本拠地の奈良県は、平城京が置かれた日本有数の古都であり、東大寺や春日大社をはじめとする世界遺産を擁する観光地です。一方で、産業構造としては、大阪のベッドタウンとしての性格が強く、県内に大きな産業が集積しているわけではありません。古都の文化と、大阪都市圏に隣接するという二つの顔を持つ奈良という土地柄が、南都銀行の数字を読む鍵になります。南都銀行の本店は、前身行の一つが大正15年に建てた壮麗なギリシャ様式建築で、国の登録有形文化財に指定されており、奈良の街並みの一部にもなっています。

南都銀行の歩みは、1934年、旧六十八銀行(国立銀行を源流とする)など県内の4行が合併して誕生したことに始まります。県内の銀行が一つにまとまって生まれた、文字どおり奈良を背負う銀行です。数字の面で目を引くのは、預貸率76.4%という高さです。これを、古都・奈良という土地から読みます。

まず、数字を並べる

南都銀行の預金は5兆8,800億円、貸出金は4兆4,932億円、預貸率76.4%。自己資本比率は10.93%、不良債権比率は1.35%。中小企業等向けの貸出残高は2兆7,162億円にのぼります。

南都銀行(令和7年3月末)
預金5兆8,800億円
貸出金4兆4,932億円
預貸率76.4%
自己資本比率10.93%
不良債権比率1.35%
中小企業等向け貸出残高27,162億円
店舗137店

預貸率76.4%・不良債権1.35%。県唯一の地銀が古都とその外で貸す数字。

76.4%を、古都と大阪都市圏から読む

預貸率76.4%は、地方銀行のなかでも高い水準です。集めた預金の8割近くを貸出に回している。県唯一の地銀として奈良の資金需要を一手に引き受けつつ、その外にも貸し先を広げていることの表れと読めます。

南都銀行が貸す相手は、まず奈良県内の事業者と個人です。観光・サービス業、大阪都市圏に通勤する人々の住宅ローン、県内の中小事業者が、その融資先に含まれます。ただ、奈良県は大阪のベッドタウンという性格が強く、県内だけでは貸出を大きく伸ばせる優良な借り手は限られます。そこで南都銀行は、隣接する大阪府や京都府、和歌山県、三重県へも積極的に進出し、県外で貸し先を広げてきました。本拠地・奈良で圧倒的なシェアを握りつつ、足りない分を都市圏で補う——この二段構えが、預貸率76.4%という高さを支えていると読めます。県内に閉じこもらず、隣接する大都市圏の資金需要を取り込む姿は、和歌山の地銀が大阪に貸し先を求める構図とも重なります。

不良債権比率1.35%は、地銀として低めに抑えられた水準です。古都の観光業から大阪都市圏の取引先まで、多様な業種・地域に貸し先が分散していること、そして県を知り抜いた県唯一の地銀の目利きの表れと読めます。自己資本比率10.93%という相応の厚みとあわせて、攻めと守りのバランスがとれた経営がうかがえます。もちろん、これらの比率には経営方針や景気も絡むため断定はできませんが、古都・奈良と隣接する大阪都市圏という二つの地盤を抜きに、この数字は読めません。三菱UFJフィナンシャル・グループと関係が深い親密地銀でもあり、大手の信用力も背景に持っています。

南都銀行が示すのは、県唯一の地銀が、本拠地と隣接都市圏の二つに貸す姿です。古都・奈良で県内シェア5割を握りつつ、大阪都市圏へも貸し先を広げる。預貸率76.4%という高さは、ベッドタウンという地盤の限界を、隣接する大都市圏で補ってきたことの表れと読めます。

同じ「県唯一の地銀」と並べてみる

本紀行には、もう一つの「県唯一の地方銀行」が登場しています。和歌山県の紀陽銀行です。紀陽銀行もまた、和歌山という地盤の限界を補うように、貸出の半分超を隣接する大阪に向けていました。南都銀行(預貸率76.4%)と紀陽銀行は、いずれも県唯一の地銀でありながら、本拠地だけでは貸し先が足りず、隣接する大阪都市圏に活路を求めるという、よく似た構図を持っています。これは偶然ではなく、大都市圏に隣接する県の地銀が共通して抱える事情です。両者を並べると、地方銀行が地盤の外をどう使うかという論理が見えてきます。もう一つの県唯一の地銀の姿は、紀陽銀行の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

県唯一の地銀は、奈良県の事業者にとって、もっとも身近な選択肢のひとつです。県内シェア5割という基盤と、大阪都市圏に広がる店舗網は、地域を越えた取引を目指す企業にとっても心強いものです。高い預貸率は積極的に貸す姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、古都と都市圏を映す

預貸率76.4%という高さは、古都・奈良に深く根ざして県内シェア5割を握りつつ、ベッドタウンという地盤の限界を隣接する大阪都市圏で補ってきた、県唯一の地銀の姿を映しています。一つの地盤で完結する地銀もあれば、南都銀行のように本拠地と都市圏の二つを使う地銀もある。数字は、その金融機関がどんな土地に立ち、どこに貸し先を求めてきたかを語ります。南都銀行の数字は、古都に本店を構えながら都市圏へ出ていく、県唯一の地銀の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの土地と立場の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。奈良県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、奈良県の地域金融機関のページもどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
南都銀行の沿革(1934年に旧六十八銀行など県内4行が合併して誕生)、奈良県唯一の地方銀行であること、県内メインバンク企業数約6割・融資シェア約5割・預金シェア約3割であること、奈良県・県内市町村の多くの指定金融機関であること、大阪・京都・和歌山・三重等への県外進出、三菱UFJフィナンシャル・グループとの親密関係、本店が国の登録有形文化財であることに関する記述=南都銀行および各種公開情報にもとづく。
奈良県の地理と産業(古都・世界遺産・観光、大阪のベッドタウンとしての性格)に関する記述=各種公開情報。
紀陽銀行の位置づけ=各種公開情報および本紀行既出記事。

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