八十二銀行——二つの銀行の名を足した地銀は、いま一県一行へ向かう
預貸率69.3%、預金8.7兆円。長野市に本店を置く八十二銀行。六十三銀行と第十九銀行が合併し「63+19=82」を名とした地銀が、長野銀行との合併で県内シェア6割・一県一行体制へ向かう、その数字を読みます。
長野県長野市に本店を置く八十二銀行は、預金8兆6,938億円、貸出金6兆260億円、店舗153。長野県を代表する地方銀行であり、地銀のなかでも全国有数の規模を誇ります。その名は、少し変わった由来を持っています。
本拠地の長野県は、南北に長く、善光寺平(長野)、松本平、諏訪、上田、伊那谷といった盆地ごとに、独立性の強い地域経済が分かれて発展してきた土地です。精密機械・電子部品をはじめとするものづくり、農業、観光と、産業の裾野も広い。こうした分散した県土の全域に、八十二銀行は深く根を張ってきました。この地域基盤の厚さが、八十二銀行の数字を読む鍵になります。
そして、この銀行を語るうえで欠かせないのが、その名の由来です。1931年、当時の長野県を代表していた六十三銀行と第十九銀行が合併し、二つの行名の数字を足して「八十二銀行」が誕生しました。63+19=82。かつての国立銀行の番号を足し合わせた、全国でも珍しい行名です。県の金融の歴史そのものを名に刻んだ銀行が、いま新たな歴史の節目を迎えています。
まず、数字を並べる
八十二銀行の預金は8兆6,938億円、貸出金は6兆260億円、預貸率69.3%。自己資本比率は15.65%と厚く、不良債権比率は1.73%。中小企業等向けの貸出残高は3兆1,827億円にのぼります。
| 預金 | 8兆6,938億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 6兆260億円 |
| 預貸率 | 69.3% |
| 自己資本比率 | 15.65% |
| 不良債権比率 | 1.73% |
| 中小企業等向け貸出残高 | 31,827億円 |
| 店舗 | 153店 |
預金8.7兆円、自己資本比率15.65%。長野県全域に根を張る、屈指の規模の地銀です。
69.3%と15.65%を、県全域の地盤から読む
預貸率69.3%という水準と、自己資本比率15.65%という厚み。この組み合わせは、長野県全域に深く根を張った地銀の、安定した経営を示しています。
八十二銀行が貸す相手は、長野県内の多様な事業者です。諏訪・岡谷の精密機械、上伊那の電子部品、県内各地の食品・農業、そして観光業まで、分散した県土のそれぞれの産業に、満遍なく貸している。預貸率69.3%は、地方銀行として手堅い水準で、集めた預金の7割近くを県内の貸出に回しています。多様な業種・地域に貸し先が分散しているため、特定の産業の浮き沈みに左右されにくく、不良債権比率は1.73%と低く抑えられています。自己資本比率15.65%という厚みは、地銀のなかでも際立っており、堅実経営で知られるこの銀行の体力を物語っています。県の経済そのものと一体となった、地力のある地銀の姿がここにあります。
もっとも、これらの数字には、長野県経済の成熟も映っています。人口減少が進むなかで、県内の資金需要は爆発的に伸びるわけではありません。預貸率が9割に迫るような攻めの数字ではなく、7割弱の手堅い水準にとどまるのは、豊富な預金に見合うだけの貸出先を県内だけで増やすことの難しさの表れとも読めます。あふれた資金は有価証券などの運用に向かい、厚い自己資本を支えています。もちろん、これらの比率には経営方針も絡むため断定はできませんが、成熟した県経済に根ざす大手地銀であることを抜きに、この数字は読めません。
いま、一県一行へ——八十二長野銀行の誕生
八十二銀行は、いま大きな歴史の節目にあります。長らく長野県内には、八十二銀行と長野銀行という二つの地銀がありました。両行は2023年に経営統合し、八十二銀行が長野銀行を子会社化。そして2026年1月1日、両行は合併し、商号を「八十二長野銀行」へと改めました。これにより、長野県内に本店を置く地方銀行は一行のみとなり、いわゆる「一県一行」体制が実現しました。合併後の単体合算の預金残高はおよそ9.5兆円規模にのぼり、中部地方の地銀のなかでは静岡銀行に次ぐ規模となります。県内における貸出金シェアは、合算でおよそ6割に達するとされます。
本記事が読み解いている数字は、金融庁が公表する令和7年(2025年)3月末時点のもので、合併前の「八十二銀行」単体の姿です。だが、その数字の延長線上に、いま県内シェア6割の巨大な地域銀行が立ち上がったことは、見ておく価値があります。63+19=82という、二つの銀行を足した名の地銀が、さらにもう一行を加えて「八十二長野銀行」になった。合併を重ねて県の金融を一手に担う存在になっていく——その歩みそのものが、この銀行の個性です。
同じ県の、信用組合と並べてみる
同じ長野県には、長野県信用組合という、県全域を地盤とする信用組合もあります。長野県信用組合の預貸率は34.6%。県全域に貸す八十二銀行(69.3%)とは、対照的な数字です。だが、この差は優劣ではありません。県を代表する大手地銀と、組合員の相互扶助を担う信用組合とでは、規模も、貸す相手も、果たす役割も違う。同じ長野県に根ざしながら、一県一行へ向かう巨大地銀と、狭い組合員の枠で地域を支える信組とが、重なり合って県の金融を形づくっている。両者を並べると、長野県の金融の重層性が見えてきます。信用組合という、もうひとつの地域金融の姿は、長野県信用組合の記事もあわせてどうぞ。
借り手にとっての意味
県全域に根ざす大手地銀は、長野県の事業者にとって、もっとも身近な選択肢のひとつです。一県一行体制となったいま、その存在感はさらに増しています。手厚い自己資本と低い焦げ付きは経営の安定を示しますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、県の金融の歩みを映す
預貸率69.3%という手堅さと、自己資本比率15.65%という厚みは、二つの銀行の名を足して生まれ、長野県全域に深く根を張ってきた地銀の姿を映しています。そしていま、もう一行を加えて「八十二長野銀行」となり、県内シェア6割の一県一行体制へと歩みを進めました。数字は、その金融機関がどんな土地で、どんな歴史を重ねてきたかを語ります。八十二銀行の数字は、県の金融を一手に担っていく地銀の、節目の記録です。
本紀行には、この八十二銀行が経営統合・合併した相手である長野銀行も登場しています。長野銀行は、松本を本拠とした第二地銀で、八十二銀行の10分の1ほどの規模でした。県を代表するこの八十二銀行と、地銀が届きにくい中小に深く貸した長野銀行(預貸率57.6%)とを並べると、同じ長野県で、規模の異なる二つの銀行が、なぜ一つにまとまる道を選んだのかが見えてきます。迎え入れた第二地銀の姿は、長野銀行の記事もあわせてどうぞ。
各地の金融機関には、それぞれの土地と歩みの事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。長野県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、長野県の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出。合併前の八十二銀行単体の計数)。
行名の由来(1931年に六十三銀行と第十九銀行が合併し、63+19=82を行名としたこと)、2023年の長野銀行との経営統合、2026年1月1日の合併と「八十二長野銀行」への商号変更、一県一行体制、合算預金約9.5兆円・県内貸出シェア約6割・中部の地銀で静岡銀行に次ぐ規模であることに関する記述=八十二銀行および各種報道(日本経済新聞等)・公開情報にもとづく。
長野県の地域経済(盆地ごとの分散、精密機械・電子部品・農業・観光)に関する記述=各種公開情報。
長野県信用組合の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。