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古川信用組合——大崎耕土の小さな信組は、不良債権7.87%を抱えて誰に貸すか

預貸率74.2%、不良債権比率7.87%、預金645億円。大崎市に本店を置く古川信用組合。米どころ大崎の小さな信組が、高い不良債権を抱えながら預金の7割超を貸す姿を、小規模信組の役割から読みます。

ニホン銀行紀行 ・ 宮城県

宮城県大崎市に本店を置く古川信用組合は、県北部を中心に営業する信用組合です。預金645億円、貸出金479億円、店舗9。本紀行に登場する金融機関のなかでも、小規模な信用組合です。仙台という大都市を抱える宮城県にあって、県北の米どころに根ざす、小さな協同組織金融機関です。

本拠地の大崎市は、宮城県北部の中心都市です。その中心市街である旧古川市を核とし、周囲には「大崎耕土(おおさきこうど)」と呼ばれる広大な水田地帯が広がります。世界農業遺産にも認定されたこの一帯は、東北有数の米どころです。農業と、それに連なる食品・流通、地域の商業が、県北の経済を支えてきました。仙台都市圏からは離れた、農業の地域です。この、米どころの小さな信組という立場が、古川信用組合の数字を読む鍵になります。

数字の面で目を引くのは、預貸率74.2%という高さと、不良債権比率7.87%という高さの組み合わせです。集めた預金の7割超を貸しながら、焦げ付きも高い。この二つを、小さな信組の役割から読みます。

まず、数字を並べる

古川信用組合の預金は645億円、貸出金は479億円、預貸率74.2%。自己資本比率は8.5%、不良債権比率は7.87%と高め。中小企業等向けの貸出先は3千件を超えます。

古川信用組合(令和7年3月末)
預金645億円
貸出金479億円
預貸率74.2%
自己資本比率8.5%
不良債権比率7.87%
中小企業等向け貸出先3,797件
店舗9店

預貸74.2%・不良債権7.87%。小さな信組が抱える数字を読む。

74.2%と7.87%を、小さな信組の役割から読む

預貸率74.2%は、信用組合のなかでは高い水準です。本紀行で見てきた信金・信組の多くが、預貸率3割から5割ほどで運用に頼るなか、古川信用組合は集めた預金の7割超を貸出に回している。規模は小さいが、貸すことには積極的な信組です。そこに、不良債権比率7.87%という高い数字が重なります。

古川信用組合が貸す相手は、大崎を中心とする県北の小規模・零細な事業者や住民が中心です。米どころの農業に連なる事業者、地域の小さな商店、零細な事業者、ほかの金融機関が規模や条件の面で貸しにくい先に、距離の近さを生かして向き合ってきたと考えられます。こうした小規模・零細な借り手や、農業に関わる事業は、天候や相場、担い手の高齢化といった影響を受けやすく、信用力の面でも余裕が小さい。そうした相手に積極的に貸せば、相対的にリスクの高い先も引き受けることになり、不良債権比率は高まりやすくなります。預貸率74.2%という積極性と、不良債権比率7.87%という高さは、ともに「小さな借り手に近い距離で貸す」小規模信組の姿の、表と裏と読めます。

自己資本比率8.5%は、これだけの不良債権を抱えながらも、協同組織としての健全性の基準は満たす水準です。規模が小さいぶん、一つひとつの貸出先の事情が数字に響きやすく、不良債権比率も振れやすい。もちろん、これらの比率には個別の大口先の事情も大きく絡むため、断定はできません。ただ、ほかの金融機関が手を伸ばしにくい小さな借り手に向き合う信組であれば、その焦げ付き比率は高めに出やすい、とまでは言えると思われます。米どころの小さな信組という立場を抜きに、この数字は読めません。

古川信用組合が示すのは、規模は小さくとも、米どころの小さな借り手に近い距離で貸す信組の姿です。店舗9、預金645億円。それでも預金の7割超を貸す。高い不良債権比率は、ほかでは借りにくい小規模・零細な事業者や農業に向き合ってきたことの裏返しと読めます。

信用組合という、より小さく地域に密着した形

古川信用組合は、信用金庫ではなく信用組合です。信用組合は、中小企業等協同組合法などにもとづく協同組織で、組合員のための相互扶助を目的とします。信用金庫と比べても、より小規模で、地域や組合員に密着した存在であることが多い。地元の小さな事業者や住民に、近い距離で向き合う——それが、この信組の役割です。店舗9という小ささは、裏を返せば、限られた範囲に深く根ざしているということでもあります。

同じ宮城で、第二地銀と並べてみる

本紀行には、同じ宮城県の仙台銀行も登場しています。仙台銀行は、仙台を本拠とする第二地方銀行でした。県全域を相手にする仙台銀行と、県北の限られた範囲で小さな借り手に貸す古川信用組合(預金645億円・店舗9)とを並べると、同じ宮城県でも、県を相手にする第二地銀と、米どころの零細に密着する小さな信組とで、規模も役割も大きく異なることが見えてきます。仙台という大都市を抱える宮城の、もう一つの金融機関の姿は、仙台銀行の記事もあわせてどうぞ。

借り手にとっての意味

小さな信用組合は、ほかの金融機関が規模や条件の面で貸しにくい小規模・零細な事業者にとって、身近な相談相手になりえます。距離の近さを生かして、地元の小さな借り手に向き合う姿勢があるぶん、頼りになる場面があります。一方で、高い不良債権比率は、貸してきた相手が信用力の面で余裕の小さい先を含むことの裏返しでもあります。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。

数字は、米どころの小さな信組を映す

預貸率74.2%という積極性と、不良債権比率7.87%という高さは、規模は小さくとも、大崎耕土の米どころで小さな借り手に近い距離で貸してきた信組の姿を映しています。大きな規模で広く貸す金融機関もあれば、古川信用組合のように小さな範囲で零細な借り手に向き合う信組もある。数字は、その金融機関がどんな規模で、誰に向き合ってきたかを語ります。古川信用組合の数字は、県北の米どころを支える小さな信組の、いまの記録です。

各地の金融機関には、それぞれの規模と役割の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。宮城県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、宮城県の地域金融機関のページもどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
古川信用組合の地盤(大崎市本店、宮城県北部を中心に営業する小規模な信用組合であること)に関する記述=古川信用組合および各種公開情報にもとづく。
大崎市・大崎耕土の地理(旧古川市を核とする宮城県北部の中心都市、大崎耕土と呼ばれる水田地帯、世界農業遺産、東北有数の米どころ)に関する記述=各種公開情報。
仙台銀行の位置づけ=各種公開情報および本紀行既出記事。
信用組合の制度(中小企業等協同組合法等にもとづく協同組織であること)に関する記述=関係法令および金融庁等の公開資料にもとづく一般的な説明。

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