神奈川銀行——大手の傘下に入った小さな第二地銀が、預金の9割近くを貸す理由
横浜市に本店を置く神奈川銀行は、店舗34、県外支店を持たない小さな第二地方銀行です。いまは横浜銀行のグループに入っています。預貸率87.5%、不良債権比率3.34%。預金の9割近くを貸し出すその数字は、中小零細に密着する地域金融の役割を映しています。
神奈川県横浜市に本店を置く神奈川銀行は、地元で「かなぎん」と呼ばれる第二地方銀行です。預金4,680億円、貸出金4,095億円、店舗34。県外に支店を持たず、神奈川県内に的を絞った、完全な地域密着の金融機関です。1953年に相互銀行として開業し、1989年に普通銀行へ転換。大きな合併を経ずに、70年あまり「かなぎん」として営業してきました。
近年、この銀行に大きな変化がありました。神奈川銀行は、横浜銀行を中核とする横浜フィナンシャルグループの傘下に入ったのです。もともと横浜銀行とは競合というより親密な関係にあり、その延長線上での経営統合でした。本拠地の神奈川県は、人口900万人を超え、事業所数は全国でも上位という大きな市場です。だがその大市場のなかで、神奈川銀行が向き合ってきた相手は、大企業ではなく中小・零細の事業者でした。この立ち位置が、神奈川銀行の数字を読む鍵になります。
まず、数字を並べる
神奈川銀行の預金は4,680億円、貸出金は4,095億円、預貸率87.5%。自己資本比率は9.69%。不良債権比率は3.34%。中小企業等への貸出先は約1万2千先です。
| 預金 | 4,680億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 4,095億円 |
| 預貸率 | 87.5% |
| 自己資本比率 | 9.69% |
| 不良債権比率 | 3.34% |
| 中小企業等向け貸出先 | 11,676先 |
| 店舗 | 34店 |
預金4,680億円に対し貸出4,095億円。小さな規模ながら、預金の大半を貸出に回しています。
87.5%という高い預貸率を、立ち位置から読む
預貸率87.5%は、かなり高い水準です。集めた預金の9割近くを貸し出している。運用に大きく振る金融機関とは対極にあり、預金を貸出という本業にほぼ振り向けている姿です。
なぜここまで貸せるのか。それは、神奈川銀行が向き合う相手が、大手銀行が必ずしも手厚くは拾わない、中小・零細の事業者だからです。人口と事業所の多い神奈川という市場で、規模の小さな事業者の資金需要は厚い。大きな銀行が大企業や優良中堅を中心に見るなかで、より小さな事業者に寄り添うのが、神奈川銀行のような小さな第二地銀の役割です。貸す相手が地元の中小零細に絞られているからこそ、預金の大半をその融資に振り向ける——高い預貸率は、その立ち位置の表れと読めます。
3.34%の不良債権比率は、役割の裏側
不良債権比率3.34%は、大手地銀と比べればやや高めの水準です。だが、これも貸す相手の性質から読めます。中小・零細の事業者は、大企業に比べれば経営基盤が小さく、景気の波や取引先の事情に左右されやすい。そうした相手にリスクを取って貸しているからこそ、焦げ付きの比率もそれなりに出る。これは、より小さな事業者を支えるという役割と表裏一体の数字です。
もっとも、不良債権比率には個別の事情や引当方針も絡むため、数字だけで経営の健全性を断じることはできません。自己資本比率9.69%は国内基準行に求められる水準を十分に上回っており、中小零細に貸すリスクを受け止める備えは保たれている、と読めます。大手グループの傘下に入ったことで、その資本基盤はさらに厚みを増したとも考えられます。
大手の傘下に入るということ
地域金融の世界では、人口減少やデジタル化を背景に、銀行の再編が進んでいます。神奈川銀行が横浜フィナンシャルグループの傘下に入ったのも、その流れのなかの一つです。大手グループの資本力やノウハウ、デジタル化の知見を取り入れられる一方で、これまで培ってきた中小零細との密着した関係は、引き続き神奈川銀行が担う部分です。規模の大きな銀行だけでは拾いきれない、地域の小さな事業者との関係——そこに、傘下に入ってなお小さな第二地銀が存在する意味があります。
数字は、役割を映す
運用に振る金融機関もあれば、県全体に広く貸す大きな地銀もあります。そして神奈川銀行のように、大市場のなかで中小零細に密着し、預金の大半を貸し出す小さな第二地銀もあります。預貸率と不良債権比率という数字の組み合わせは、その金融機関が誰に向き合っているかを映す鏡です。大手の傘下に入った小さな銀行が示す高い預貸率は、より小さな事業者を支えるという役割の表れと読めます。
各地の金融機関には、それぞれの規模と役割が刻まれた、それぞれの生き方があります。神奈川県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、神奈川県の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
横浜フィナンシャルグループ傘下入り・店舗網・沿革に関する記述=神奈川銀行および報道各社の公開情報等。
神奈川県の市場規模(人口・事業所数)に関する記述=神奈川県等の公開情報等。