南日本銀行——薩摩の第二地銀は、中小に深く貸して何を抱えるか
預貸率76.3%、不良債権比率5.03%。鹿児島市に本店を置く南日本銀行。鹿児島の中小・零細企業に深く貸す第二地銀が、高めの預貸率とやや高い焦げ付きを抱える姿を、薩摩の地から読みます。
鹿児島県鹿児島市に本店を置く南日本銀行は、地元で「なんぎん」と呼ばれる第二地方銀行です。預金7,761億円、貸出金5,922億円、店舗64。鹿児島県のなかで、地方銀行の鹿児島銀行に次ぐ立場にある第二地銀で、鹿児島県を主な地盤としています。
本拠地の鹿児島は、桜島を望む薩摩の地です。畜産・茶・さつまいも・焼酎といった農業と食品加工、水産業、そして観光が経済を支える一方、本格的な大企業の集積は乏しく、地域経済は中小・零細企業に厚く支えられています。県土は南北に長く、離島も多い。こうした、中小・零細が経済の芯を成す土地柄が、南日本銀行の数字を読む鍵になります。
南日本銀行は、1943年に複数の無尽会社が合同して設立され、相互銀行を経て1989年に普通銀行へ転換しました。数字の面で目を引くのは、預貸率76.3%という高さと、不良債権比率5.03%というやや高めの数字の組み合わせです。
まず、数字を並べる
南日本銀行の預金は7,761億円、貸出金は5,922億円、預貸率76.3%。自己資本比率は9.49%、不良債権比率は5.03%。中小企業等向けの貸出残高は5,466億円にのぼります。
| 預金 | 7,761億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 5,922億円 |
| 預貸率 | 76.3% |
| 自己資本比率 | 9.49% |
| 不良債権比率 | 5.03% |
| 中小企業等向け貸出残高 | 5,466億円 |
| 店舗 | 64店 |
預貸76.3%・不良債権5.03%。中小に深く貸す第二地銀の数字。
76.3%と5.03%を、中小密着の立場から読む
預貸率76.3%は、地方銀行・第二地銀のなかでも高めの水準です。集めた預金の8割近くを貸出に回している。そこに、不良債権比率5.03%というやや高めの数字が重なります。この組み合わせは、中小・零細に深く貸す第二地銀の姿を、はっきりと示しています。
南日本銀行が貸す相手は、鹿児島の中小・零細企業が中心です。中小企業等向けの貸出残高5,466億円が、貸出金の大半を占めることが、その性格をよく表しています。大企業の少ない鹿児島では、地域経済の担い手は無数の中小・零細事業者です。畜産・食品加工・水産・建設・小売——こうした事業者に、地銀の鹿児島銀行と分け合いながら、より小回りの利く融資で深く向き合ってきたのが、第二地銀・南日本銀行の役割でした。預貸率76.3%という高さは、運用に逃げず、地域の中小に積極的に貸してきたことの表れと読めます。
その積極性の裏返しが、不良債権比率5.03%というやや高めの数字です。体力に余裕の小さい中小・零細に深く貸せば、相対的にリスクの高い先も引き受けることになり、焦げ付きは高まりやすい。高い預貸率とやや高い不良債権比率は、ともに「中小に深く貸す」第二地銀の姿の、表と裏です。自己資本比率9.49%という相応の水準を保ちながら、リスクを取って地域に資金を供給してきた。もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、中小・零細が経済の芯を成す鹿児島という土地と、地銀に次ぐ第二地銀という立場を抜きに、この数字は読めません。
同じ鹿児島で、島の信金と並べてみる
本紀行には、同じ鹿児島県の奄美大島信用金庫も登場しています。奄美大島信金は、本土から遠く離れた奄美の島々に根ざす信金でした。鹿児島本土を中心に中小に広く貸す南日本銀行(預貸率76.3%・店舗64)と、奄美の島々に根ざす奄美大島信用金庫とを並べると、同じ鹿児島県でも、本土の中小に深く貸す第二地銀と、離島の経済を支える信金とで、地盤も役割も大きく異なることが見えてきます。南北に長く離島も多い鹿児島の、もう一つの金融機関の姿は、奄美大島信用金庫の記事もあわせてどうぞ。
第二地銀という立場から読む
第二地方銀行は、その多くが無尽や相互銀行を源流とし、戦後に普通銀行へ転換して生まれました。地域には先に地方銀行があり、第二地銀はそれに次ぐ立場から出発することが多い。だからこそ、地銀より小回りの利く融資や、地銀が手を伸ばしにくい中小・零細への密着で、自らの居場所を作ってきた銀行が少なくありません。南日本銀行の預貸率76.3%という高さと、やや高い不良債権比率は、まさに地銀に次ぐ立場で、中小に深く貸すことで活路を開いてきた歩みの表れと読めます。
借り手にとっての意味
第二地方銀行は、地域の中小事業者にとって、地銀と並ぶ身近な選択肢です。とりわけ、中小・零細に深く向き合う姿勢を持つ第二地銀は、地銀が慎重になりがちな先にも向き合うことがあります。高い預貸率は積極的に貸す姿勢の表れとも読めますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、薩摩の経済を映す
預貸率76.3%という高さと、不良債権比率5.03%というやや高めの数字は、大企業の少ない鹿児島で、中小・零細に深く貸して地域経済を支えてきた第二地銀の姿を映しています。大企業に貸す銀行もあれば、南日本銀行のように無数の中小に向き合う第二地銀もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを語ります。南日本銀行の数字は、薩摩の中小を支える第二地銀「なんぎん」の、いまの記録です。
各地の金融機関には、それぞれの土地と立場の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。鹿児島県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、鹿児島県の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出残高=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
南日本銀行の沿革(1943年に無尽会社の合同により設立、相互銀行を経て1989年に普通銀行へ転換、鹿児島市本店、第二地方銀行)に関する記述=南日本銀行および各種公開情報にもとづく。
鹿児島県の産業(畜産・茶・さつまいも・焼酎等の農業と食品加工、水産業、観光、中小・零細企業が地域経済の中心であること、南北に長く離島が多いこと)に関する記述=各種公開情報。
奄美大島信用金庫の位置づけ=各種公開情報および本紀行既出記事。
第二地方銀行の一般的な成り立ち(無尽・相互銀行を源流とする等)に関する記述=一般的な金融制度の説明にもとづく。