茨城県信用組合——県全域を地盤とする大型信組は、何に貸すか
預貸率42.8%、預金1.3兆円、中小先4.2万。水戸市に本店を置く茨城県信用組合。県全域を地盤とする大型信組が、預金の4割強を中小に貸す姿を、信組という立場から読みます。
茨城県水戸市に本店を置く茨城県信用組合は、地元で「けんしん」とも呼ばれる信用組合です。預金1兆2,787億円、貸出金5,478億円、店舗77。信用組合としては全国でも有数の規模を持ち、茨城県のほぼ全域を地盤とする大型の信用組合です。中小企業等向けの貸出先は4万2千件近くにのぼります。
本拠地の茨城県は、首都圏の一角として、農業・工業・商業がバランスよく広がる土地です。水戸を県都とし、つくばの研究学園都市、鹿島の臨海工業地帯、そして全国有数の農業産出額を誇る広大な農地が県内に並びます。首都圏に近い県南部から、農業の盛んな県北・県西まで、地域ごとに異なる経済を抱えています。この、県全域に多様な経済が広がる土地を、一つの信組が地盤とするという立場が、茨城県信用組合の数字を読む鍵になります。
数字の面で目を引くのは、まずその規模です。預金1.3兆円、中小先4万2千近く——信用組合としては破格の大きさです。あわせて、預貸率42.8%というやや低めの水準があります。この規模と預貸率を、信組という立場から読みます。
まず、数字を並べる
茨城県信用組合の預金は1兆2,787億円、貸出金は5,478億円、預貸率42.8%。自己資本比率は9.98%、不良債権比率は3.21%。中小企業等向けの貸出先は4万1,890件にのぼります。
| 預金 | 1兆2,787億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 5,478億円 |
| 預貸率 | 42.8% |
| 自己資本比率 | 9.98% |
| 不良債権比率 | 3.21% |
| 中小企業等向け貸出先 | 41,890件 |
| 店舗 | 77店 |
預金1.3兆円・中小先4.2万。信組としては破格の規模を持つ。
42.8%を、県域の大型信組から読む
信用組合は本来、信用金庫よりもさらに小規模で、特定の地域や組合員に密着した存在であることが多い。だが茨城県信用組合は、預金1.3兆円・店舗77・中小先4万2千近くという、信組としては破格の規模を持ちます。県のほぼ全域を地盤とし、無数の中小・零細事業者と個人を組合員として束ねてきた結果が、この大きさです。預貸率42.8%は信組として中庸からやや低めですが、注目すべきはむしろ、これだけの規模で県全域の中小に資金を行き渡らせていることです。
茨城県信用組合が貸す相手は、茨城県内の中小・零細事業者と個人です。農業の盛んな県北・県西の事業者、県南の商工業、地域の商店・建設・サービス業といった、県内のあらゆる地域の小さな担い手が、その融資先に含まれます。地方銀行や信用金庫が地区や規模で線を引くなかで、県域の信組として、より小さな借り手に幅広く向き合ってきた。中小先4万2千近くという数字は、その裾野の広さを物語ります。預貸率がやや低めにとどまるのは、これだけの預金を集めながら、信組が原則として組合員(地区内の中小事業者・住民)にしか貸せず、大企業に貸せないという制度の枠のなかで、貸し切るには至らないことの表れと読めます。
不良債権比率3.21%は、これだけの規模で多数の零細に貸しながら、地方の金融機関として中程度に収まっている水準です。自己資本比率9.98%という、協同組織として基準を満たす水準とあわせて、規模を生かしてリスクを分散しつつ堅実に経営してきた姿がうかがえます。もちろん、これらの比率には個別の事情や経営方針も絡むため断定はできませんが、県全域を一つの信組が束ねるという立場を抜きに、この数字は読めません。
信用組合という、地域に密着した協同組織
茨城県信用組合は、信用金庫ではなく信用組合です。信用組合は、中小企業等協同組合法などにもとづく協同組織で、組合員のための相互扶助を目的とします。信用金庫と比べても、より小規模・零細な事業者や住民に密着した存在であることが多い。地区や組合員を限って、その内側の小さな担い手に深く向き合う——それが信組の役割です。茨城県信用組合は、その役割を県全域という広い範囲で果たすために、信組としては異例の規模にまで育ってきた、と読めます。
同じ茨城で、地区の信金と並べてみる
本紀行には、同じ茨城県の水戸信用金庫も登場しています。水戸信金は、県都・水戸を中心とする信用金庫でした。県全域を地盤とする大型信組・茨城県信用組合(預貸率42.8%・中小先約4.2万)と、水戸を中心とする地区に根ざす水戸信用金庫とを並べると、同じ茨城県でも、県域を束ねる大型信組と、特定の地区を支える信金とで、その広がりが異なることが見えてきます。地区の信金の姿は、水戸信用金庫の記事もあわせてどうぞ。
借り手にとっての意味
県域の大型信用組合は、茨城県の小さな事業者にとって、身近で頼りになる選択肢です。地区や規模で他の金融機関が貸しにくい零細な事業者にも、信組として向き合ってきた厚みがあります。預貸率の水準は信組の制度や地盤の事情によるもので、それが個別の融資の可否を一律に決めるわけではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、県域の広がりを映す
預金1.3兆円・中小先4万2千近くという規模と、預貸率42.8%という水準は、県全域を地盤に、無数の小さな借り手を束ねてきた大型信組の姿を映しています。特定の地区に密着する小さな信組もあれば、茨城県信用組合のように県域を束ねる大型信組もある。数字は、その金融機関がどんな範囲で、誰に向き合ってきたかを語ります。茨城県信用組合の数字は、県全域の中小を支える「けんしん」の、いまの記録です。
各地の金融機関には、それぞれの範囲と役割の事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。茨城県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、茨城県の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
茨城県信用組合の地盤(水戸市本店、茨城県のほぼ全域を地盤とする大型の信用組合であること、信用組合として全国有数の規模であること)に関する記述=茨城県信用組合および各種公開情報にもとづく。
茨城県の経済(首都圏の一角、水戸・つくばの研究学園都市・鹿島臨海工業地帯、全国有数の農業)に関する記述=各種公開情報。
水戸信用金庫の位置づけ=各種公開情報および本紀行既出記事。
信用組合の制度(中小企業等協同組合法等にもとづく協同組織であること)に関する記述=関係法令および金融庁等の公開資料にもとづく一般的な説明。