高山信用金庫——飛騨の観光と木工のまちで、信金は何に貸すか
預貸率54.4%、不良債権比率5.36%。高山市に本店を置く高山信用金庫。古い町並みと木工・家具で知られる飛騨高山に根ざす信金の数字を、観光と地場産業の土地から読みます。
岐阜県高山市に本店を置く高山信用金庫は、地元で「たかしん」と呼ばれる信用金庫です。預金2,306億円、貸出金1,256億円、店舗19。飛騨地方の中心都市・高山を地盤とする信用金庫です。
本店のある高山市は、飛騨の山々に囲まれた、観光と地場産業のまちです。江戸期の城下町・商家町の面影を残す「古い町並み」で全国に知られ、海外からも多くの観光客が訪れる、日本有数の観光都市です。同時に、豊かな森林資源を背景にした木工・家具の産地でもあり、飛騨の家具は全国にその名を知られています。市町村合併により、高山市は日本一広い面積を持つ市となりました。この、観光と木工・家具という地場産業のまちが、高山信用金庫の数字を読む鍵になります。
この信用金庫の数字で目を引くのは、預貸率54.4%という中庸の水準と、不良債権比率5.36%というやや高めの数字の組み合わせです。集めた預金の半分強を貸しながら、焦げ付きはやや高い。この二つを、飛騨高山という土地から読みます。
まず、数字を並べる
高山信用金庫の預金は2,306億円、貸出金は1,256億円、預貸率54.4%。自己資本比率は9.67%、不良債権比率は5.36%。中小企業等向けの貸出先は9千件を超えます。
| 預金 | 2,306億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 1,256億円 |
| 預貸率 | 54.4% |
| 自己資本比率 | 9.67% |
| 不良債権比率 | 5.36% |
| 中小企業等向け貸出先 | 9,112件 |
| 店舗 | 19店 |
預貸54.4%・不良債権5.36%。観光と木工のまちの信金の数字を読む。
54.4%と5.36%を、観光と木工のまちから読む
預貸率54.4%は、信用金庫として中庸の水準です。運用型の信金ほど低くはなく、都市部の信金ほど高くもない。集めた預金の半分強を地域に貸しています。そこに、不良債権比率5.36%というやや高めの数字が重なります。
高山信用金庫が貸す相手は、高山を中心とする飛騨地方の中小事業者です。古い町並みを支える観光関連の旅館・飲食・土産物の事業者、飛騨の木工・家具メーカー、林業、そして地域の商業が、その融資先に含まれます。観光業は、景気や災害、近年では感染症の流行といった外的な要因に売上を大きく左右されやすい業種です。木工・家具も、住宅市場の動向や安価な輸入品との競争にさらされてきました。こうした変動を抱える業種に長く貸し続けてきたことが、不良債権比率5.36%というやや高めの水準の背景にあると読めます。一方、観光が好調なときには相応の資金需要が生まれるため、預貸率は54.4%と、運用型の信金よりは高い水準を保っています。
もっとも、これらの比率には個別の大口先の事情や経営方針も絡むため、「観光と木工の変動がそのまま比率に出ている」と言い切ることはできません。ただ、変動の大きい観光・地場産業に根ざす信金であれば、その焦げ付き比率に土地の産業の浮き沈みが映りやすい、とまでは言えると思われます。日本有数の観光地であり、木工の伝統を持つ飛騨高山という土地を抜きに、高山信用金庫の数字は読めません。
なぜ、こうなったのか——制度と地域
高山信用金庫が地元の中小事業者に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の定める「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。
この枠のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。高山信用金庫にとって、その「地元」とは、観光と木工・家具を芯とする飛騨高山の地域経済そのものです。会員資格が地区内に絞られるという制度の枠が、結果として「飛騨の観光と地場産業に貸す信金」という姿を形づくっています。
同じ岐阜の、山あいの信金と並べてみる
本紀行には、同じ岐阜県の八幡信用金庫も登場しています。八幡信金は、郡上おどりと水のまち・郡上八幡に根ざす信金でした。観光と木工の飛騨高山に根ざす高山信用金庫(預貸率54.4%)と、郡上の山あいに根ざす八幡信用金庫とを並べると、同じ岐阜の山間部でも、それぞれの土地の観光と産業を背負って、信金が地域を支えていることが見えてきます。飛騨と奥美濃、二つの山あいの信金——両者を並べると、岐阜の地形と経済の幅が見えてきます。郡上の信金の姿は、八幡信用金庫の記事もあわせてどうぞ。
借り手にとっての意味
地元に根ざす信用金庫は、地域の事業者にとって身近な相談相手です。とりわけ、観光業や木工・家具を営む飛騨の中小事業者にとって、土地の事情を知る信金の存在は心強いものです。一方で、やや高めの不良債権比率は、地域の一部の事業者が変動のなかで課題を抱えていることの裏返しでもあります。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、飛騨の産業を映す
預貸率54.4%という中庸さと、不良債権比率5.36%というやや高めの数字は、観光と木工・家具という変動の大きい産業を抱える飛騨高山に根ざし、地元の事業者を支えてきた信金の姿を映しています。安定した産業の土地の信金もあれば、高山信用金庫のように浮き沈みのある観光・地場産業に寄り添う信金もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、どんな産業に向き合ってきたかを語ります。高山信用金庫の数字は、飛騨の観光と木工のまちの、いまの記録です。
各地の金融機関には、それぞれの土地の産業と事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。岐阜県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、岐阜県の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
高山信用金庫の地盤(高山市本店、飛騨地方を地盤とすること)に関する記述=高山信用金庫および各種公開情報にもとづく。
高山市の産業(古い町並みで知られる観光都市、飛騨の木工・家具の産地、豊かな森林資源、市町村合併により日本一広い面積を持つ市となったこと)に関する記述=各種公開情報。
八幡信用金庫の位置づけ=各種公開情報および本紀行既出記事。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。