福島信用金庫——県都と県北を地盤に、信金は何に貸すか
預貸率42.9%、自己資本比率15.45%。福島市に本店を置く福島信用金庫「ふくしん」。二つの信金が合併して生まれ、福島市・伊達など県北を地盤とする信金の数字を、果樹と県都の土地から読みます。
福島県福島市に本店を置く福島信用金庫は、地元で「ふくしん」と呼ばれる信用金庫です。キャッチフレーズは「暮しのとなりに、いつもふくしん」。預金4,495億円、貸出金1,927億円、店舗24。県都・福島市を中心に、伊達市・二本松市・本宮市など県北一帯を地盤とし、伊達市・桑折町・国見町の指定金融機関を受託しています。
本店のある福島市は、福島県の県庁所在地であり、中通り北部の中心都市です。市の象徴・花見山に代表されるように、この一帯は果樹栽培の盛んな土地。福島市から伊達、桑折にかけては、桃・梨・りんごといった果物の名産地として知られ、夏には全国有数の桃の産地となります。県都としての商業・行政の集積と、果樹を中心とした農業——この二つの顔を持つ県北という土地柄が、福島信用金庫の数字を読む鍵になります。
福島信用金庫の歩みには、合併の歴史が刻まれています。源流は1918年(大正7年)設立の有限責任福島市信用組合にさかのぼり、1959年に太陽信用金庫と合併して福陽信用金庫となりました。そして1976年、福陽信用金庫と伊達中央信用金庫が対等合併し、福島市を本店とする「福島信用金庫」が誕生しました。2026年には、この合併から数えて創立50周年を迎えています。数字の面で目を引くのは、預貸率42.9%という控えめな水準と、自己資本比率15.45%という厚みの組み合わせです。
まず、数字を並べる
福島信用金庫の預金は4,495億円、貸出金は1,927億円、預貸率42.9%。自己資本比率は15.45%と厚く、不良債権比率は5.09%。中小企業等向けの貸出先は1万4,811件にのぼります。
| 預金 | 4,495億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 1,927億円 |
| 預貸率 | 42.9% |
| 自己資本比率 | 15.45% |
| 不良債権比率 | 5.09% |
| 中小企業等向け貸出先 | 14,811件 |
| 店舗 | 24店 |
控えめな預貸率と厚い自己資本。県都と果樹の里に根ざす信金の数字。
42.9%と15.45%を、県北の土地から読む
預貸率42.9%という控えめな水準と、自己資本比率15.45%という厚み。この組み合わせは、県都を抱えながらも、地方の信金として堅実な守りを固める姿を示しています。
福島信用金庫が貸す相手は、福島市・伊達を中心とする県北の中小事業者です。果樹をはじめとする農業や、その加工・流通、県都・福島市の商業、地域の建設業が、その融資先に含まれると考えられます。中小企業等向けの貸出先は1万4,811件と、店舗24に対して幅広い取引先を抱えており、地域に深く根ざしていることがうかがえます。一方で、預貸率42.9%は、預金の半分にも満たない水準です。県都を抱えるとはいえ、福島県北も人口減少が進む地域であり、貸出を大きく伸ばせる優良な借り手は限られます。集めた預金のうち貸出に回しきれない分は、有価証券などの運用に向かいます。
注目したいのは、自己資本比率15.45%という厚みと、不良債権比率5.09%というやや高めの数字が同居している点です。地域の中小事業者に貸し続ければ、人口減少や高齢化の進む土地では焦げ付きのリスクも高まりやすい。やや高めの不良債権比率は、その土地の厳しさの表れと読めます。それでも経営が揺らがないのは、自己資本比率15.45%という厚い守りがあるからです。福島県北は、東日本大震災と原発事故の影響を受けた地域でもあり、地域経済の再建を地元の金融機関として支えてきた歩みもあります。福島市・伊達市・桑折町・国見町・川俣町と地域密着の連携協定を結ぶなど、自治体と一体になって地域の活性化に取り組んできました。もちろん、これらの比率には個別の事情も絡むため断定はできませんが、果樹と県都という二つの顔を持つ県北という土地を抜きに、この数字は読めません。
なぜ、こうなったのか——制度と地域
福島信用金庫が地元に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。
この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。福島信用金庫にとって、その「地元」とは、県都・福島市と果樹の里・県北の地域経済です。自治体との地域密着連携協定や、「暮しのとなりに、いつもふくしん」というキャッチフレーズは、地区に根ざして組合員の相互扶助を担うという信金の理念を、地域づくりの現場へ広げる姿といえます。二つの信金が合併して規模を確保し、県北を一体で支えてきたことも、地区に根ざす信金として地域を守る選択だったと読めます。
同じ県の、もうひとつの信金と並べてみる
同じ福島県には、中通り南部の須賀川に根ざす須賀川信用金庫があります。須賀川信用金庫は不良債権比率2.55%と低めで、中通りの経済の厚みに支えられた堅実さを持っていました。県北の福島信用金庫(不良債権比率5.09%)は、同じ中通りでも、より焦げ付きが高めです。同じ福島県の中通りでも、県北と県南という地域の違いや、それぞれが抱える事情によって、数字の形は異なる。これは優劣ではなく、それぞれの土地の差です。中通り南部の信金の姿は、須賀川信用金庫の記事もあわせてどうぞ。
借り手にとっての意味
地元に根ざす信用金庫は、地域の中小事業者にとって、身近な相談相手です。とりわけ、県北で果樹や商いを営む事業者にとって、土地の事情を知る信金の存在は心強いものです。厚い自己資本は経営の安定を示しますが、それが個別の融資の可否を保証するものではありません。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理しています。
数字は、県北の歩みを映す
預貸率42.9%という控えめさと、自己資本比率15.45%という厚みは、県都・福島市と果樹の里・県北に根ざし、二つの信金が一つになって地域を支え、震災からの再建にも向き合ってきた信金の姿を映しています。攻めて貸す信金もあれば、福島信用金庫のように厚い守りで地域に寄り添う信金もある。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを語ります。福島信用金庫の数字は、花見山を望む県都に立つ「ふくしん」の、合併50年の節目の記録です。
各地の金融機関には、それぞれの土地と成り立ちの事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。福島県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、福島県の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
福島信用金庫の沿革(1918年に有限責任福島市信用組合として設立、1959年に太陽信用金庫と合併し福陽信用金庫、1976年に福陽信用金庫と伊達中央信用金庫が対等合併し福島信用金庫が誕生、2026年に合併創立50周年)、福島市・伊達市・二本松市・本宮市等を地盤とすること、伊達市・桑折町・国見町の指定金融機関であること、自治体との地域密着総合連携協定、キャッチフレーズ「暮しのとなりに、いつもふくしん」に関する記述=福島信用金庫および各種公開情報にもとづく。
福島市・県北の地理と産業(県都としての集積、花見山、桃・梨・りんご等の果樹栽培)、東日本大震災・原発事故の影響に関する記述=各種公開情報。
須賀川信用金庫の数値=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。