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羽後信用金庫——米どころの信金は、何を抱えているのか

不良債権比率10.59%、預貸率48.0%。米どころ秋田・由利本荘に根ざす羽後信用金庫。やや高い不良債権を、米作りを基幹とする農業と人口減少という土地から読む。

ニホン銀行紀行 ・ 秋田県

秋田県由利本荘市に本店を置く羽後信用金庫は、地元で「うごしん」と呼ばれる、秋田県南西部の信用金庫だ。預金1,490億円、店舗35。鳥海山と日本海に挟まれた、米どころの地に根を張っている。

由利本荘市を含む秋田県南西部は、米作りを基幹とする農業の地だ。鳥海山のふもとに広がる田で育つ米を主力に、秋田由利牛やアスパラガス、りんごといった農畜産物も生まれる。一方で、この地域は人口減少が早くから進み、市の人口は最盛期の六割ほどまで落ち込んでいる。電子部品の製造業も立地するが、特定の企業への依存度が高い。この「米どころで、人口減少が進む」という土地柄が、羽後信用金庫の数字を読む鍵になる。

この信用金庫の数字で目を引くのは、不良債権比率10.59%という、かなり高めの水準だ。預貸率は48.0%で、集めた預金のおよそ半分を貸出に回している。米どころの信金が、なぜこれだけの不良債権を抱えるのか。この数字を、秋田という土地から読むと、地方の信金が向き合う現実が見えてくる。

まず、数字を並べる

羽後信用金庫の預金は1,490億円、貸出金は716億円、預貸率48.0%。自己資本比率は9.98%、不良債権比率は10.59%。中小企業等向けの貸出先は1万件を超える。

羽後信用金庫(2025年3月期)
預金1,490億円
貸出金716億円
預貸率48.0%
自己資本比率9.98%
不良債権比率10.59%
中小企業等向け貸出先10,651件
店舗35店

米どころの信金が抱える不良債権10.59%。この数字を、秋田の土地から読む。

10.59%を、米どころの今から読む

不良債権比率10.59%は、全国の信用金庫のなかでも高い部類に入る。だが、これを「危ない信金」と短絡すべきではない。秋田という土地が抱える事情から読むと、別の姿が見えてくる。

羽後信用金庫が貸す相手の多くは、地元の中小事業者だ。そのなかには、米作りを中心とする農業の関係者、そして人口減少地域で商いを続ける商店・建設・サービス業の事業者が、相当数含まれていると考えられる。米作りは、国全体の米消費量の減少や生産調整の見直しによって、農業所得が伸びにくい構造的な課題を抱えている。加えて、地域全体の人口減少は、事業の縮小や後継者不在につながる。こうした、構造的な課題を抱える農業と、人口が減り続ける地域の事業者に貸す信用金庫では、不良債権比率が高めに出やすいと考えられる。自己資本比率が9.98%と、ぎりぎり一割に届く水準であることも、楽な経営環境ではないことをうかがわせる。

もちろん、不良債権比率には個別の大口先の事情や引当の方針も絡むため、農業や人口減だけが原因とは断じられない。だが、米どころでありながら人口が減り続ける土地で、地元に貸し続けてきた信金であることを抜きに、この数字は読めない。不良債権比率10.59%は、地方の信金が向き合う現実そのものといえる。

なぜ、こうなったのか——制度と地域

羽後信用金庫が地元に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度がある。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められている。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれない。

この制度のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られる。羽後信用金庫にとって、その「地元」とは、米作りを基幹とし、人口減少が進む秋田県南西部の地域経済そのものだ。楽ではない土地で、それでも地元に資金を流し続けることが、この信金の役割といえる。

借り手にとっての意味

地元に根ざす信用金庫は、地域の事業者にとって身近な相談相手だ。とりわけ、農業の関係者や人口減少地域の小さな事業者にとって、地元の事情を知る信金の存在は心強い。一方で、不良債権比率の高さは、その地域の事業者が課題を抱えていることの裏返しでもある。預貸率という数字の読み方は、預貸率の読み方であらためて整理している。

数字は、地方の今を映す

不良債権比率10.59%という数字は、全国の物差しで見れば高い。だが、米どころでありながら人口が減り続ける土地で、地元の農業者や事業者に貸し続けてきた信金の数字としては、別の意味を帯びる。数字は、その金融機関がどんな土地で、誰に向き合ってきたかを映している。羽後信用金庫の数字は、地方が抱える現実の今そのものだ。

各地の金融機関には、それぞれの土地の事情が刻まれた、それぞれの生き方がある。同じ米どころの信金でも、屯田兵が拓いた北海道・中空知の北門信用金庫は不良債権が低く、対照的だ。あわせて読むと、同じ「米をつくる土地」でも、農業の基盤や人口の事情が違えば数字はこれだけ違うとわかる。秋田県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、秋田県の地域金融機関のページもどうぞ。

出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先件数=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末(預貸率は貸出金÷預金で算出)。
由利本荘市・秋田県南西部の米作りを中心とする農業、人口減少、電子部品製造業の立地に関する記述=秋田県・由利本荘市・各種公開情報。米消費量の減少や生産調整による農業所得の課題は公的資料で示された事実。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=金融庁 金融審議会「協同組織金融機関のあり方に関するワーキング・グループ」資料『協同組織金融機関の「地区」のあり方』(2008年6月20日・神吉正三)。

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