浜松磐田信用金庫——ものづくりのまちで、静岡最大の信金は何に貸すか
静岡県浜松市に本店を置く浜松磐田信用金庫は、預金2兆8,430億円を抱える静岡県最大の信用金庫です。預貸率49.0%、不良債権比率4.34%。楽器・オートバイ・繊維という世界的なものづくりを生んだ土地に根ざす信金の数字を読み解きます。
静岡県浜松市に本店を置く浜松磐田信用金庫は、地元で「浜松いわた信用金庫」と表記される、静岡県最大の信用金庫です。預金2兆8,430億円、貸出金1兆3,938億円、店舗86。2019年に、浜松信用金庫と磐田信用金庫という県内の有力2金庫が合併して発足しました。中部地方でも屈指の規模を持つ信金です。
本店のある浜松市は、日本でも有数の「ものづくりのまち」です。東京と大阪のほぼ中央に位置し、天竜川の豊かな水と温暖な気候に恵まれたこの地では、古くから織物・製材・木工が栄えました。やがて織物から自動織機へ、製材から木工機械へと産業が進化し、戦後には楽器・オートバイへと飛躍します。ヤマハ、カワイ、ローランドといった世界的な楽器メーカー、ホンダやスズキ、ヤマハ発動機を生んだオートバイ産業——いずれも、この浜松の地から世界へ羽ばたきました。腕のいい技術者と職人が集まり、次々と新しい産業を生んできた土地。この厚いものづくりの集積が、浜松磐田信用金庫の数字を読む鍵になります。
まず、数字を並べる
浜松磐田信用金庫の預金は2兆8,430億円、貸出金は1兆3,938億円、預貸率49.0%。自己資本比率は13.35%。不良債権比率は4.34%。中小企業等への貸出先は約7万3千先にのぼります。
| 預金 | 2兆8,430億円 |
|---|---|
| 貸出金 | 1兆3,938億円 |
| 預貸率 | 49.0% |
| 自己資本比率 | 13.35% |
| 不良債権比率 | 4.34% |
| 中小企業等向け貸出先 | 72,565先 |
| 店舗 | 86店 |
中小企業等への貸出先は約7万3千先。ものづくりのまちの事業者に、広く貸しています。
49.0%という預貸率を、ものづくりの土地から読む
信用金庫として、預貸率49.0%は中庸の水準です。集めた預金のおよそ半分を貸出に回している。運用に偏るのでも、貸出に振り切るのでもない、バランスの取れた数字です。
これを浜松という土地と重ねると、見えてくるものがあります。浜松のものづくりは、世界的な大企業だけでなく、それを支える無数の中小の製造業——部品加工、金型、機械、繊維などの事業者の層の厚さで成り立っています。浜松磐田信用金庫が貸す相手は、その厚い中小製造業の裾野です。中小企業等への貸出先が7万を超えるという数字が、その広がりを物語っています。世界的企業の足元に広がる、ものづくりの担い手たちに着実に貸す——その姿が、半分という預貸率に表れていると読めます。
4.34%の不良債権比率を、どう見るか
不良債権比率4.34%は、信用金庫としてやや高めの水準です。これを、ものづくりの土地という観点から読んでみます。
製造業は、好不況の波や、為替・原材料価格、世界的な需要の変動をまともに受ける産業です。とりわけ中小の製造業は、大企業の生産動向や、技術の世代交代の影響を受けやすい。そうした波のある製造業に貸し続けてきたことが、4.34%という比率の背にあると読むのが、実態に近いでしょう。もっとも、不良債権比率には個別の事情や引当方針も絡むため、「製造業の波がそのまま比率に出ている」と断じることはできません。ただ、ものづくりの中小に深く貸す信金であれば、その焦げ付き比率には土地の産業の体温が映りやすい、とは言えると思われます。
一方で、自己資本比率13.35%は信用金庫として厚めの水準です。波のある製造業に貸す以上、焦げ付きの振れを受け止める備えを厚くしておく——攻めと守りのバランスを取った経営、と読めます。県内最大の信金として、合併で得た規模の力も、この安定を支えていると考えられます。
なぜ、こうなったのか——制度と地域
浜松磐田信用金庫が地元の中小事業者に貸す信金であることの背景には、信用金庫という制度があります。信用金庫が融資できる相手は原則として「会員」に限られ、その資格は信用金庫法10条1項により、信用金庫の定める「地区」の中に住所や事業所がある人、その地区で働く人、と定められています。事業者には規模の制限もあり、大企業は会員になれません。
この枠のもとでは、貸す相手はおのずと地元の中小事業者や住民に絞られます。浜松磐田信用金庫にとって、その「地元」とは、楽器・オートバイ・繊維を芯に発展してきた浜松・磐田一帯のものづくりの地域経済です。会員資格が地区内に絞られるという制度の枠が、結果として「ものづくりの中小に貸す信金」という姿を形づくっています。世界的企業そのものではなく、それを足元で支える中小の層に貸すのが、この信金の持ち場です。
数字は、土地の産業を映す
運用に振る信金もあれば、守りに徹する信金もあります。そして浜松磐田信用金庫のように、世界的なものづくりの土地で、その裾野の中小製造業に貸し続ける信金もあります。預貸率・不良債権・自己資本という数字の組み合わせは、その金融機関がどんな産業とともにあるかを映す鏡です。ものづくりのまちの信金が示すバランスの取れた数字は、波のある製造業に寄り添いながら、備えも怠らない姿の表れと読めます。
各地の金融機関には、それぞれの土地の産業と事情が刻まれた、それぞれの生き方があります。静岡県の他の金融機関とあわせて眺めたい方は、静岡県の地域金融機関のページもどうぞ。
出典:預金・貸出金・預貸率・自己資本比率・不良債権比率・中小企業等向け貸出先=金融庁「中小・地域金融機関情報一覧」令和7年3月末。
浜松のものづくり産業(織物・楽器・オートバイ等)と合併の経緯に関する記述=浜松市・浜松商工会議所・浜松磐田信用金庫等の公開情報等。
信用金庫の地区・会員資格に関する記述=信用金庫法10条1項、および金融庁・全国信用金庫協会の公開資料等。